京都の「かやぶきの里」に金縁の顔出しパネル 独特な存在感に「景観損なう」戸惑いの声

京都新聞社 京都新聞社

 かやぶきの里など、京都府南丹市の観光地に風変わりな「顔出しパネル」がお目見えした。大きなパネル内に額縁を配し、かやぶき民家などを借景にしながら、絵画の中に入ったような写真を楽しんでもらう趣向だ。SNS(会員制交流サイト)での発信を通じて知名度を高めたい市が発案した自信作だが、独特な存在感に「景観を損なう」と戸惑いの声も聞こえてくる。

 縦1・8メートル、横1・2メートルのパネルの中に金の額縁を配置。パネルは5種類で、周囲の景観になじませるため、額縁のまわりに新緑や紅葉などをデザインした。製作費は約50万円。

 当初、市は「顔ハメパネル」を構想した。動物や武将などの体を描き、空洞にした頭の部分に顔をはめて撮影するタイプだ。しかし、市議会で空洞の枠に顔などが触れやすく、新型コロナウイルス感染防止の観点から不適切と指摘された。市は意見を踏まえ、顔が接しづらい額縁式のアイデアをひねり出した。コロナ禍がやや落ち着いた7月中旬から継続的に置き始めた。

 「いらんて、そんなん」。同20日、美山町のかやぶきの里では、神戸市から来た男性(65)が、額縁を使って撮影しようとする妻を制した。男性は「かやぶきが素晴らしいから、このまま撮れば良い」。1時間で15人が訪れたが、パネルの利用者はいなかった。

 渓谷が美しい同町の芦生ロードパーク、八木町の紅葉峠展望台、日吉ダムがある日吉町の道の駅「スプリングスひよし」にも設置。園部町の園部公園にも置く考えだが、景色の中でぽつんと異質に見えなくもない。観光団体関係者は「知名度上昇を狙う意図は良いが、センスがもうひとつ」と首をかしげる。

 市観光交流室は「アイデアへの好意的な意見はもらっているが、パネルがやや際立つ感じはあるかもしれない」とする。デザインが季節と合わなくなった時などには、一部を隠す対応も考えたいという。その上で「一幅の絵のような写真を撮ってSNSで広げてほしい。関西の旅行会社ですら、市の観光地を知らないケースがある。パネルを生かして発信していきたい」と期待をつなぐ。

 4千以上の顔ハメパネルを巡り、SNSや書籍などで魅力を発信する「顔ハメ看板ニスト」塩谷朋之さん(38)=東京都=は「想像を超えており、かなりシュール。変わった看板として拡散されそうな気配はある」と指摘する一方で、「市が宣伝したい風景がパネルで隠れてしまう面もある。コロナで観光の在り方が変わったために生まれた看板。枠に気持ちよく顔をあてがえる日々が早く戻ってほしいと痛感した」とする。

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