観光地などで定番となっている、いわゆる「顔出しパネル」。人物などのイラストの顔部分に穴がくり抜かれていて、そこから顔を出して写真を撮って楽しむものですが、こんなパネルはいかがですか。大すりばちのような砂の斜面…下から少年に襲いかかる不気味な生きもの。迫りくる鋭利なあごは、まもなく少年の体をつかもうとしていて…。!ああっ、助けて!断末魔の悲鳴が聞こえてきそうです…「あぎゃぎゃぎゃーっ!」
このパネル、鳥取砂丘近くの大型ドライブイン「砂丘会館」に置かれています。不気味な生きものは…砂丘に生息している「アリジゴク」を巨大化させたもの。アリジゴクとはウスバカゲロウの幼虫で、地元の方言では「ももんじょ」とも呼ばれています。乾燥した土地にすりばち状の巣を作り、巣にひそんで落ちてきたアリなどの生きものを捕えます。そんな生きものの生態を恐怖のシーンに仕立てたパネルが、鳥取砂丘のダイナミックな砂丘の景観を楽しんできた観光客の注目を集めているといいます。
Twitterではパネルについて、「怖い、このB級感」「トラウマになるわ」「攻めてるよね」「こんな地獄みたいな顔出し看板でいいのか」といった声が続々と。そこはかとない絵の怪しさに、海外の映画や、漫画家・楳図かずおの作品で、学校が突然砂漠の世界にタイムスリップしてしまう「漂流教室」のワンシーンを思い出したという人もいました。
砂丘会館の発案者に聞きました。
―変わった顔出しパネルですね。
「2017年のゴールデンウィークのころに設置しました」
―どうしてこんなパネルを。Twitterなどで話題になっていますけど。
「それは『インスタ映え』を狙ったからです。最近よくいわれている『SNSマーケティング』ですよ。こういったものを作れば話題になるな…とアイデアを考えて、デザイナーに発注して作りました」
―パネルの内容も驚きですけど、いまここで「SNSマーケティング」という言葉を聞くと思わなかったので、少し動揺してます…。
「看板のサイズだって縦横150センチ。正方形のスクエアで、インスタグラムの撮影にちょうどいいようにしています」
―でも、話題になるのに、このデザインでなくても…。
「自分が映画脳というか、とても映画好きなので。砂の惑星(巨大な虫が支配する砂に覆われた星が舞台)とか、スターシップ・トゥルーパーズ(昆虫型宇宙生物と人類が戦う)とか…SFっぽいものをイメージして考えました。ひとりでも多くの人に面白がってもらえたらと思っています」
―ああ、なんか砂丘の様子がほかの惑星に見えてきました。なお、パネルに顔をいれた状態の写真を提供してくれた、鳥取砂丘でパラグライダーが体験できるスクール「ゼロ パライグライダースクール」の方によると、スクールに来られた方たちにとっても、パネルは「一部ファンの方には人気」といいます。どんな人が撮影していますか。
「女性や子どもさんが撮影する率が高いですね。カップルでも女性だけが撮影したりしています。男性だけのグループだと意外に撮りません。照れくさいのかもしれません」