「金属バットって折れるの?」 ソフト上野投手の剛速球で真っ二つに、メーカーに聞いた

広畑 千春 広畑 千春

 25日に行われた東京五輪のソフトボール1次リーグのカナダ戦で、日本の上野由岐子投手が投じた一球が相手打者の金属バットを真っ二つに折ったことが話題を呼んだ。「えっ、金属バットって折れるの?」とSNSでも驚きの声が上がっていた。

「木製バットが折れるのは見たことあるけど金属バットも折れるのは初めて知った」
「これでデッドボール喰らったらただじゃすまないな」
「上野さんもだけど、その上野さんの剛速球に当てて来てるバッターのスイングスピードもスゲえって事じゃねぇの」

 まるで漫画の1シーンを実写化したかのような場面にネット上だけでなく、試合を実況していたアナウンサーや解説者も呆然としていた。金属バットを折るとは…どれほどの破壊力のある投球だったのか、メーカー担当者に聞いた。

 バットが折れたのは、0-0で迎えた2回1死一塁の場面。上野投手のインコースの速球を相手打者は差し込まれつつ振り抜いたが、ピッチャーフライで併殺に。バットはグリップのあたりから真っ二つになっていた。当の上野投手は騒ぎをよそに「また折れちゃった感じです。つまらせたかったので重い回転のある球を意識して投げた」と涼しい顔で振り返っていたが…。

 折れたバットは米スポーツ用品メーカー、ローリングス社の製品。日本法人の担当者によると、正確には金属製ではなく、より軽くてしなりのあるカーボンのコンポジット(複合)素材で、ボールを打つ太い打球部分と、グリップ(ハンドル)部分の2ピース構造になっているという。

 バットの耐久基準は国ごとに異なり、国内ではSG基準に基づき製造されている。一方、同社では独自の基準をもとに試験を行っており、ボールを打つ“芯”と呼ばれる部分には170km/hのスピードボールを1カ所に数百回以上という規定回数当てても壊れない強度を保証。ハンドル部分は、70マイル/h(112.65km/h)から80、90、100とスピードを上げていき、100マイル/h(160.93km/h)のボールを規定回数以上当てても問題ないかテストしているという。

 今大会で使われているボールは、革製で硬球と同じぐらいの固さがあり、硬球に比べ大きくて重い分、衝撃も大きい。至近距離から投げ込まれるため、かすっただけでも骨折してしまう事もあるほどで、近年はバットもカーボン製が主流になっているという。担当者は「野球の感覚で捉えられがちですが、衝撃力はかなり違う。それでも耐久基準は簡単には折れないよう設定してありますし、バットが折れるのはなかなか珍しいこと」としつつ、映像ではボールはバットの根元付近に当たっていることから、「一番細くなっている部分なので、折れるとしたら一番ありうるところ」とも。

 その上で「上野選手の球威の凄さは本当に驚くばかりですが、相手バッターのスイングスピードや、あれだけ差し込まれた所からなお打ちに行き振り抜くパワーも凄い。そうした要因が重なり合ったからあれだけ見事に折れたのだろうと思います」といい、「世界最高峰のパワーとパワーがぶつかる、オリンピックという真剣勝負の舞台だからこそでは」と舌を巻いていた。

 日本は26日のアメリカ戦で1-2でサヨナラ負けを喫し、2位で予選通過。27日の決勝では2008年北京大会以来の金メダルを懸け、再びアメリカと対峙する。

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