「お膝の上はあたたかくて最高だニャ!」お客さんへの膝乗りとお尻ポンポンが大好きな猫がいる雑貨店

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 熊本市中央区にある、猫がいる文具雑貨の店「Select SHOP nëco」。ここにはお客さんの膝に乗り、お尻をポンポンされるのが大好きな猫がいる。店主の山本麻衣さん(43)の飼い猫「ジュニア」(通称ジュニ、オス、13歳)だ。4年前、いつも一緒で大の仲良しだった黒猫の「梅太郎」(通称うめさん、オス、14歳で没)が突然、虹の橋をわたり、いなくなった寂しさからか「ジュニの膝乗り度合いが激しくなった」と山本さん。ただ、コロナ禍のいま、その大好きな膝乗りは感染予防のため〝我慢中〟。「早く元通りの接客が気兼ねなくできるようになれば」と願っている。ジュニとの出会いや、うめさんの思い出などを山本さんに聞いた。

 山本さん ジュニは昔、私が働いていた会社の敷地内にある公衆トイレでよく目撃されていた子。生後半年くらいで、夜しか姿を見せない野良だったんですが、ある朝、バイトの子が「猫が出ました!」と事務員の私を呼びに来たんです。そのバイトの子がさわりたいというので、「野良の子だし、きっと警戒心強くて呼んでも寄ってこないよ」とたしなめながら、一応「おいで」と声をかけてみると、バーッと一目散に私の方へ走ってきたんですよ(笑)。

 それで、里親を探そうと、保護して事務所内に入れたのですが、パソコンをやってる私の膝の上に乗ってきて。何度か降ろしてもまた私の膝の上に戻ってくるし、そんなことされたら、もう手放せなくなって…。出会った初日から、膝乗りで心をつかまれてしまったんです(笑)。

 そのとき、私の家では黒猫の「梅太郎」(通称、うめさん、当時5歳)を飼っていました。うめさんは幼いころ兄弟で捨てられていたのを友だちが見つけ、私が引き取った子です。その日、ジュニを家に連れて帰ると、ジュニはふてぶてしくも、うめさんがいつも寝ているソファの上で寝てしまったんですよ。うめさんは「えっ、なにかいるぞ」といった感じでソファの周りをうろうろ。でも、うめさんは威嚇とかする子じゃなくて、おっとりした性格なので、初日からジュニを受け入れてくれたんです。

 2匹はすぐに仲良しになりました。うめさんはジュニがプロレスをして耳を噛んだりしても、何をされても怒らないんです。すごく面倒見がよく、親子みたいにいつも一緒でした。

 当時の私は勤務していた会社の仕事が忙しく、そんな2匹となかなかゆっくり過ごすことができなかったんですよね。ある日、うめさんが体調を崩して生死の境をさまよったことがありました。すぐ元気になったのですが、その時私は、猫たちと一緒に働ける仕事がしたい、と強く思い、猫たちのためにいつでも休みが取れるようにと、この雑貨店を始めたんです。

 おおらかで面倒見のいいうめさん、うめさんを慕ってべったりのジュニ。2匹は看板猫として、すぐにお客さんの間で人気者になりました。最愛の猫たちと一緒に働くという夢が叶って、とても幸せでした。ところが…。

 開店から3年弱が経った2017年5月のある日。いつもなら店にいるのに、その日は初めてのイベントで熊本市内の会場に出店していたんです。イベントが終わって夜帰ってくると、うめさんがよだれをたらし、動けなくなっていて…。慌てて病院へ連れていき、翌朝、少し回復したのを確認してイベント会場へ向かったのですが、その日の夕方、病状が急変し、虹の橋を渡ってしまったんです。

 14歳。心筋症でした。あまりに突然の出来事で、頭が真っ白になりました。猫たちの都合に合わせられるように始めた仕事なのに、うめさんを看取ることができなかったショックで、一時は店を閉めようかと考えたこともありました。

 ショックだったのは私だけではありません。うめさんを火葬した後も、ジュニは昼間、寝ることもなく「どこにいるの?」とずっとうめさんを探し続け、夜になると電池が切れたようにバタンと倒れる…そんな状態が1週間ほど続きました。

 こんなこともありました。棚の上にいたジュニが急に駆け降りてきて、「ウワーン」と窓の外を見て急に鳴いたんです。居合わせたお客さんによれば、ちょうど野良の黒猫が店の前を通り過ぎたんだそうです。「ジュニくん、あれはうめさんじゃないんだよ」と、お客さんは涙ぐみながらジュニに語りかけていました。

ジュニの膝乗りが激しくなったきっかけは?

 それまでも私やお客さんの膝の上に乗るのは好きな子でしたけど、ジュニの膝乗りが激しくなったのは、うめさんがいなくなってからなんです。膝の上にのる滞在時間が長くなり、時には膝の上で寝落ちしてしまうことも。うめさんといつもくっついて寝ていたので、人間の膝や太もものぬくもりが、うめさんの代わりになっているのではと思います。乗り心地のいい常連さんがやってくると、その人の足元まで近づき、「のせて!」と自分から誘います。そして、膝に乗っているときは、お尻をポンポン叩かないと怒るんです(笑)。

 昨春の緊急事態宣言以降、感染予防のため、お客さんへの膝乗りは中止し、感染が落ち着いたら1人5分だけに限定して再開。増えるとまた中止しての繰り返し。今年始めからはほとんど〝我慢中〟です。最近は「なんでやってくれないの?」「どうせ途中でやめるんでしょ」と、疑心暗鬼になっている面もありますね(笑)。

 うめさんがいたときは、私が外出しても2匹なので安心でしたけど、いなくなってからはジュニを残して外出すると、帰ってきたとき、「なんでもっと早く帰ってこなかった?」とすごく文句をいわれます(笑)。ジュニも私も、ずっとうめさんロスが続いているんです。

 周囲からは「いなくなって4年も経ってるのに長くない?」って言われることもありますけど、うめさんを失った心の穴は、うめさんでしか埋められないんですよね。だから、その気持ちをありのままに受け入れて、これからもジュニと一緒に笑顔で店を続けていきたいです。たくさんのお客さんたちが、つらかったころの私を支えてくれたので、その恩返しもしていきたいですね。

【店名】猫がいる文具雑貨の店「Select SHOP nëco」
【住所】熊本市中央区帯山6-3-65
【インスタグラム】https://www.instagram.com/neco20140812/

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