コロナ禍の緊急事態宣言で、時短や休業要請が相次いだ小売業界だが、生活用品や食料品を供給する店舗は対象外だった。感染リスクの不安と戦いながら営業をつづけた、関西にあるスーパーの水産部門チーフに、売り場の裏側とお給料事情を聞いた。
部門チーフのお仕事とは
関西にある総合スーパーに勤めるSさん(31歳)は、鮮魚売り場を任される水産部門のチーフ。自分より年上のパートタイマーに的確な指示を出しながら、商品を効率よく売りさばく責任を負う。
1日の始まりは早い。
「朝は、6時すぎには店に着いています。下準備をしてから7時前にタイムカードを押して、12時頃まで調理や品出し(商品を売り場に陳列する)、発注業務など。一段落ついたらお昼休憩を1時間とって、13時頃から商品の補充や追加の調理と並行して事務作業もやります。16時頃に値引きシールを貼って、終わったら退勤します。休みはひじょうに取りにくいですね。もちろん急には休めません」
新型コロナで緊急事態宣言が発出された中、生活用品や食料品を供給するスーパーは対象外とされた。従業員の中に「休みたい」という人はいなかったのだろうか。
「感染が恐いから休みたいというパートさんはいました。私自身もそうです。でも特別なケアはしておらず、みんなの強い責任感でなんとか乗り切った感じです。うがい、手洗い、アルコール消毒を徹底して、自分たちで安心をつくりだしました」
コロナ禍で営業を続けた中で見えてきた、問題点や課題もあるという。
「政府や自治体からマスクの着用をうるさくいわれているのに、ノーマスクで来店されるお客様がいらっしゃいます。体質的にマスクが合わないのは仕方ありませんが…」
マスクを着けましょうと呼びかけていながら義務化しない政府の対応に不満が残るという。また、ネットで流布される「商品がなくなる」とか「コロナには、この食べ物が効く」などの誤った情報に騙されないようにしてほしいとも訴える。
理不尽なクレームと戦いながらの年収はおいくら?
Sさんは食品関係の仕事を志し、食品メーカーの商品全てを扱うのはスーパーだと考えて就職を決めた。今の職場に勤めて10年になる。部門チーフはお客さんと直接応対し、クレームの処理も行わねばならない、ストレスの多いポジションだ。とくにクレームは、店側に落ち度がない場合は対応に苦慮するという。
「たとえば、数十分前に会計を終えた商品をもって戻ってきて『今見たら値引きされているから、差額を返金しろ』といわれたり、休み明けの日に『毎日いてくれないと聞きたいことも聞けなくて困る』といわれたり、理不尽な要求が多いです」
お客さんとケンカするわけにはいかないので、伝えるべきことは伝えて理解を求めることにしている。
上司からの無茶ぶりもある。
「うちは水産部門なので鮮魚を扱います。規模の大きいお店なら水槽を置いて、生きた魚が泳いでいるのをお客さんに見せてから調理するのですが、それを規模の小さいお店でもやりたいというのです。そこは人手不足とロスの観点を説明して、ハッキリと断りますね」
では、スーパーで働いていて、やりがいはなんだろう。
「2018年に台風21号が来たときは、たくさんのスーパーやコンビニが機能停止に陥った中、当店は運良く営業ができており、多くのお客様が買い物に来てくださいました。そのときに『たくさんの人の生活を支えているんだな』と、やりがいを感じました」
世の中が大変なときでも、多くの人々の生活を支えている責任と使命感を感じながら職務に従事しているという。
想像するよりも心身ともに大変な仕事だが、年収は450万円くらいだそうだ。奥さんと娘さんの3人暮らし。多いか少ないかは、人それぞれ感じ方が異なるだろう。
「季節や天候で日々の残業は変わることがありますが、年収で見れば変動はあまりないです。他社さんの事情はわかりませんが、おそらく平均的ぐらいかなと思っています」
最後に、スーパーで買い物をするのに、お勧めの時間を聞いてみた。
「お客様の少ない時間を狙うなら14時~15時。値引きが目当てなら16時~17時頃ですかね。魚売り場に関しては、開店して30分くらいが鮮度もいいし、商品を十分に出せています」