カブに乗ってキャンプに行き、競馬中継を聞きながらギターをつま弾きコーヒーを飲む…。
どれもこれもみなアニメ経由と思われる趣味を満喫するオタクっぽい青年のイラストがSNS上で大きな注目を集めている。
「"やりたいことやったもん勝ち"を実践できるヤツが一番幸せそうだなと思うようになってきた」という言葉を添えてこのイラストを投稿したのは福田ナオさん(@fukku7010gmail1)。
たしかに漫画やアニメの影響で新たな趣味に飛びつく人を「ミーハー」と見下す風潮は根深い。しかし結果的により人生を楽しむことができるのは、外野の中傷など気にせず「やりたいことやった」人のほうなのだ。
福田さんの投稿に対しSNSユーザー達からは
「これは本当にそう思う 周囲の偏見を気にして多数派の思うように動くのは果たして幸せなのか?」
「一周回って趣味として完成されてて笑う…地味にサバイバル力もありそうだ…」
「(投稿のイラストは)ゆるキャン△、けいおん!、スーパーカブ、ウマ娘の4作品かな?」
「好きなものがたくさん有れば人生行き詰まることが少ないと思う。」
など数々の共感のコメントが寄せられている。
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福田さんにお話をうかがってみた。
中将タカノリ(以下「中将」):今回のご投稿のきっかけについてお聞かせください。
福田:漫画やアニメ・ゲームの影響で新しい趣味を始める、ということはよくあると思うのですが、ここ最近は特に『ウマ娘』や『スーパーカブ』が盛り上がっていると同時に、そうした作品から影響を受けて新しい趣味に飛びつく人をちょっと小馬鹿にするような風潮もあるような気がしていました。
一方で自分自身は20代後半に差し掛かって興味の方向性がどんどん狭くなってきていたし、「やりたいことに何でも飛びつくフットワークの軽さってむしろ羨ましいことで、素晴らしいじゃないか」と思ったんですよね。それに、10年以上前に『けいおん!』の影響で一瞬初めてすぐ挫折したギターを「もっとちゃんと練習していればよかったなぁ」と後悔することも増えてきて、そんな気持ちを私の数少ない趣味の一つである「絵」にしておこうかな……と思い描き上げました。
中将:ご自身への戒めみたいな意味もあったのですね。
福田:基本は「ミーハーでもなんでも、興味のあることはすぐに全部やったほうがいい」と思っています。とくに作品から影響を受けて何かをするのは、作品世界や登場人物の解釈の手助けにもなりますし、憧れのキャラクターと同一化したような気持ちにもなれます。ある意味「聖地巡礼」にも近いと思っています。
例えば『けいおん!』が流行ったときに父親のギターをもらって『ふわふわ時間』を練習したり、『プリティーリズム』シリーズにハマったときは実際にスケートをやったりしました。めちゃくちゃすぐに飽きましたけど…。
興味を持ったことに積極的に手を出すというスタンスを維持するのは心のエネルギーががいります。Twitterに投稿したあのイラストは、ここのところ心のエネルギー不足に陥りがちな自分を奮い立たせるような意味のものでもあります。
中将:これまでのSNSの反響へのご感想をお聞かせください。
福田:思っていたよりもはるかに多くの方に共感していただけたと思います。恐れていたのはミーハーファンに対するアンチのような意見もくるだろうかということだったのですが、そうした反応はほとんどなかったです。
意外なことにマナーの点を指摘する方が何名かいて、「絵の中のこのオタクはギターを弾いているけど、競馬中継を聞いているということは時間帯は昼。それに焚火台を使っている。つまり、マナーを守って趣味を楽しんでいる」という反応がありました。「誰にも迷惑をかけない限りは、趣味はバンバンやったほうがいい」というのが総意かなと思いました。
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【福田ナオさん関連情報】
▽福田ナオ絵Twitterアカウント
https://twitter.com/fukku7010gmail1
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趣味や関心の幅を広く持つことは、心の豊かさや他者理解にもつながると思う。読者のみなさんも漫画などで何か興味を持ったことがあれば「ミーハー」という声など気にせずどんどんそこに飛び込んでいただきたいものだ。
なお福田さんは日々SNS上でエッセイ風日記やイラストなどを投稿している。いずれも現代に生きる我々のツボをついたユニークな作品ばかりなので、ぜひ多くの方にご覧になっていただきたいと思う。