先天性で口と鼻がつながった子犬、悩んだ末に家族に 水を飲むこともままならなかったが、3度の手術を乗り越えた!

岡部 充代 岡部 充代

「口蓋裂(こうがいれつ)」というのを聞いたことがあるでしょうか。口蓋とは口腔と鼻腔を隔てる壁のことで、上顎の天井にあたる部分。先天的、または後天的要因によって口蓋が左右に分かれ、真ん中に穴が開いて口と鼻がつながった形成異常を口蓋裂と言います。人間だけでなく犬や猫にも見られますが、「ネットで調べてもあまり情報が出てこなかった」と言うのは、昨年12月にジャックラッセルテリアのビンゴくんを迎えた石間大介さん、華奈さん夫妻。ビンゴくんは先天性の口蓋裂でした。

 

 犬を飼うことを考えていた二人は、「ペットショップで買うのではなく、迎えるのなら保護犬を」といろいろなサイトやSNSで情報収集していました。そんなとき知人から舞い込んだのが、犬のブリーダーが引き取り手を探している犬がいる、という話です。そのうちの1匹が生後約2カ月、口蓋裂のビンゴくんでした。

「口蓋裂について調べてもあまり情報が出てきませんでした。後で分かったことですが、口蓋裂の子はお乳を飲んでも鼻から出てしまって栄養が取れなかったり、誤嚥性肺炎で亡くなったり。ブリーダーさんが安楽死を選ぶケースもあるようで、成長するまで生きている子自体が少ないみたいなんです」(大介さん)

 

 二人は1カ月近く話し合いました。そもそも犬を飼うタイミングは今でいいのか。手術をすれば治ることは分かったけれど、それまでちゃんと世話できるのか。華奈さんは一度、断ろうと思ったそうですが、今度は「うちが飼わなかったら次はあるの?」という心配が…。悩みに悩んだ末、二人はビンゴくんと家族になると決めました。

「コロナで会わせてもらえなかったのですが、送られてきた写真や動画を見ていると、うちに来たいって言ってる気がしたんです」(華奈さん)

 

 口蓋裂の手術は去勢手術と一緒にするつもりでした。でも家に来たビンゴくんを見ていると、悠長なことは言っていられないような…。

「ごはんを食べるたび、水を飲むたびにむせるし、咳き込むし、鼻から出てくるし。しゃっくりもずっと出ていて、体力が持たないんじゃないかと」(大介さん)

 かかりつけ医に紹介してもらい高度二次診療の病院へ行くと、即入院、翌日手術が決まりました。思いがけずビンゴくんを預けてくることになった華奈さんは、帰宅後も、翌日の手術中も、退院までずっと泣いていたそうです。手術は無事に成功し、病院からは毎日、報告の写真や動画が届きましたが、コロナのせいで面会がかなわず、ビンゴくんへの想いが募ったようです。

 

 10日で退院できましたが、手術はこれで終わりではありません。1回目は硬口蓋という鼻に近い部分を縫い合わせ、次は軟口蓋という奥のほうの手術が必要だったのです。今度こそ去勢手術の時期を待つつもりでしたが、退院後もしゃっくりを繰り返し、飲んだ水も鼻から出ていたため早めることになりました。

 ビンゴくんはまた頑張りました。そして、あと少しで会える!と思っていたときです。病院から「傷口が裂けてしまったため再手術が必要」という無情な連絡が…。夫妻はビンゴくんの状況と短期間に全身麻酔をするリスクなどを確認した上で手術に同意。結果的に2度目の入院は半月以上になりましたが、ビンゴくんは3度の手術を乗り越え、元気に帰ってきてくれました。まだ口の中に糸が残っていますが、それは時間が解決してくれます。

 

「口蓋裂というのは事前に分かっていたことですし、元気に育ってくれているので、今はこの子でよかった!と思っています。手術前は食べたものが鼻に入って大変でしたけどね。中に入ったフードが腐ることもあると言われていましたし。ふやけやすいもの、そうじゃないもの、粒の大きさもいろいろ試しました。ブリーダーさんはそこまで手を掛けられないと思うので、この子が生きられたのは生命力が強かったからだと思います」(大介さん、華奈さん)

 水を飲ませるのも、給水器かお皿か?お皿の高さは?お水の量は?など試行錯誤しながら育ててきました。硬いオヤツやオモチャもNGで、どうやって遊ばせてあげようかと悩んだことも一度や二度ではありません。そのたび経験者の話を聞きたいと思った二人は、インスタグラムでビンゴくんの経過や自分たちの経験談を紹介しています。手術費用の明細も病院の了解を得て公表しました。

「病院によって違うと思いますが、とにかく情報がなくて困ったので、誰かの役に立つのならと。先生も快諾してくださいました」(大介さん)

 ビンゴくんは現在、生後9カ月。「まだオモチャなど制限もあるので、早く他の子たちと同じことをさせてあげたい。明るくてテンションの上がる名前がいいと思ってビンゴにしたので、そういう毎日にしてあげたいです」(大介さん、華奈さん)

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