大阪の小さな会社が、大手メーカーでも超えられない味を作って54年 その秘密に迫る!

松田 義人 松田 義人

 大阪・八尾市に本社を置く旭食品。従業員数25名と取り立てて大きいとは言えない中小のメーカーですが、近畿圏はもちろん全国的にも知られ、ある種カリスマ的な見方をされることもある調味料を生産・販売しています。その名も旭ポンズ。

 

 ぽん酢商品は、大手食品メーカーでも各種販売されており、旭ポンズに比べれば、数割から半値近い値段で購入することができます。しかし、一度旭ポンズの爽やかな柑橘の風味、出汁、後味の良さを味わうと、他社のそれらでは満足できなくなるほど。こういった理由から旭ポンズは全国で年間200万本も売り上げ実績を誇るようですが、しかしここで疑問も浮かびます。

 なぜ、これだけの売り上げ・絶大な支持を得ている旭ポンズの味を、大手メーカーは超えることができないのか。そこで今回は、旭食品の専務取締役・高田雅規さんに話を聞きました。

乾麺を作る会社が始めたポンズ生産。しかし、当初は理解を得るのが大変だった!

――旭食品の成り立ちから、旭ポンズ誕生までをお聞かせください。

高田 1948年、私の祖父にあたる先代社長が大阪・八尾で太子乾麺所という、乾麺を加工する会社をスタートさせました。そこから10年後に冷やしだしという、かけうどんの冷たいつゆのような商品を販売し、人気商品となりました。

 

高田 この冷やしだしのヒットをきっかけに、うどんだしの素、そばつゆの素を作り、さらに研究を重ねて1967年に旭ポンズの製造と販売を始めました。

――実に54年もの歴史があるのですね。当時、類似商品はあったのでしょうか。

高田 なかったと聞いています。ですので、まず『お客さまに使っていただく』ことが一番苦労したようです。大阪で有名な木津市場という場所があるのですが、そこに卸す際も『売れるか売れないかわからないもの』という理由で買い取りで扱ってもらえず、当初は『売れた分だけ払ってもらう』という委託販売を行なっていたようです。

――旭ポンズのパッケージには調理名がズラリと書かれていますが、こういった「用途」を知らせる理由もあったのでしょうか。

高田 そうだと思います。これらパッケージも全て創業者である先代の社長が描いたものでした。

 

出汁取りの段階から柑橘果汁を合わせ、ガラス瓶で流通。そのことであの味・鮮度を保てる!

――やがて近畿圏を中心に浸透し始めます。後には「ポンズ」という存在自体が、特に鍋を食べる際に欠かせないものになり、大手メーカーもこぞってポンズ商品を販売するようになります。

 しかし、大手メーカーの大半が「醤油」の強い商品に対し、旭ポンズは柑橘度・出汁が強く、まるで違う調味料のようにさえ感じるほどです。なぜ大手は旭ポンズのような商品を作ることができないのでしょうか。

高田 一番は、イチから出汁を取り、この段階から徳島県産すだち、ゆこう、ゆずなどの柑橘果汁を合わせていく点だと思います。これは実に手間がかかり、また鮮度を保つのも大変です。おそらく大手だと手間、人件費などの理由で割に合わないのではないかと思います

――市販されている360ml入りの旭ポンズは年間200万本も販売されるそうですが、なぜ大手は真似しないのでしょうか。

高田 大手メーカーのポンズ商品は、さらに多く販売されており採算が十分取れるからではないでしょうか。一方弊社の場合、会社の規模が小さくアイテム数も少ないため、前述のようなこだわった配合をし手間をかけたとしても採算が取れます。

 また容器にも特徴があり、風味・品質を落とさずに流通させる上では、どうしてもガラス瓶でなければいけません。当然このことで、送料が増す、破損の危険性が増すといったリスクがあり、大手メーカーではやりたがらないのだと思います。その点、弊社ではあくまでも味にこだわり、こういったリスクを背負ってでも従来のやり方を守り続け、美味しい味をご提供し続けています。

旭ポンズ50周年を記念した、より幅広い料理に使える新商品も

――「アイテム数が少ない」というお話がありましたが、現在旭食品では旭ポンズのほかに、旭ぶっかけポンズ、うどんだしの素、そばつゆの素の4商品を展開されています。このうち旭ぶっかけポンズは、従来の旭ポンズと何が違うのでしょうか。

高田 旭ポンズ誕生から50年を記念して作った商品で、出汁と甘みを強めたもので、酸味を抑えています。より幅広い料理に使っていただけるものです。

 現在はこの4商品のみを展開していますが、これから先の未来にも新しい味をご提供できるよう、常時研究を重ねています。ぜひ今後ともご注目いただければ幸いです。

 

旭ポンズのストイックな味の追求は、聞けば聞くほどに大手では真似できないものだと思いました。ポンズと言えば「鍋」での用途をイメージしますが、様々な料理に使える上、柑橘の爽快感はこれからの季節にも合いそうです。ぜひ使ってみてはいかがでしょうか。

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