京都と言えば言わずと知れた全国屈指の観光都市だが、最近ひそかに注目を集めているのが公衆トイレだ。
「暗い・汚い・怖い」の三点セットのイメージが定着している公衆トイレだが、全国的に徐々に改善されつつある。それでもなお、全国の自治体が視察に訪れるトイレとはいかなるものなのか。
公衆便所ってこんなのだったっけ?
二条城の外堀にある公衆トイレは、二条城のお堀とマッチする土塀をイメージした外観に、中は暖色系のライティングに京都らしいワンポイントアクセントをあしらった内装は和洋折衷スタイルで、入る者にある種感動を与えるレベルに仕上がっている。そう、「ここは外資系の五つ星ホテルのトイレだったけ?」と錯覚させるレベルだ。
また、清水寺境内の観光トイレ(これも市が管理する公衆トイレ)は、もはや日本家屋そのものだ。清水寺の境内にマッチした傍目に見ると一瞬、お茶室かなと思うデザインでまとめられている。
そして、もうひとつ、嵐山観光駐車場内のトイレを紹介しておこう。
天井や柱に竹をふんだんに使い、竹のイメージをうまく融合させた幾何学模様のタイル、外観もすっきりとした純和風の日本家屋のイメージで統一された見事にお洒落なトイレで、観光客のまさにレストルールという言葉がしっくりくる。どれも公衆便所の概念をいい意味で裏切ってくれる。さらに、こちらのトイレは、昨年10月にコロナ対策の一環で光触媒抗ウイルスコーティングまで施されている。
ネーミングライツを導入、実は地元の応援も!
これらは、観光都市京都として観光地トイレリニューアル事業として積極的にやっている一方、ネーミングライツ(命名権)手法も積極的に取り入れている。先述の嵐山トイレは「イワモトエンジニアリング嵐山レストルーム」という名前で、年間10万円が支払われている。
自社のネーミングを冠すると愛着が湧くのだろうか、実は昨年行われた抗ウイルスコーキングもこの会社が無償で寄付をしている。しかし、トイレの命名権などにお金を払って宣伝効果などあるのだろうか?
イワモトエンジニアリング株式会社の藤原和正社長を直撃してみると、
「宣伝効果?ないですね。そもそも、我々のお客様は地元の方、観光トイレは観光客しか使いませんから」
なかった。ではなぜ?
「トイレ改修の施工したのがきっかけですが、お世話になっている地元への地域貢献の一貫です」
実は、京都市の事業には、京都マラソンや京都市交響楽団、京セラ美術館などをはじめ多くの事業が地元企業の支援によって成立しているものが沢山ある。インスタ映えトイレもこうした地元のサポートが一役を買っている。こうした企業によるサポートは、明治時代に町衆がお金を出し合って地域の学校を建設していった時代から続くある種京都の文化だ。こうした地域のサポートによって観光も支えられてるという側面にも思いを馳せつつ、コロナが落ち着いて京都を訪れた際には観光地トイレにも足を運んでみてはどうだろうか。