「この店の 売上支える 拾い猫」 店主の猫川柳にほっこり、猫の置物に絵付け体験できるアトリエの猫たち

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 有田焼で有名な佐賀県有田町の有田内山地区にある「アトリエ夢」。窯元で長年、絵付けをしてきた店主・浦川よしえさん(73)が店で飼っているのがキジ白の「あみ」(メス、1歳)とハチワレ柄の「だぶつ」(オス、1歳)兄妹だ。同店では、手びねりで作られた猫の置物への絵付け体験ができ、2匹はお客さんの間で人気者。だぶつはショーウインドーにたたずみ、客招きするのが日課だ。2匹のおもてなしぶりなどについて、浦川さんに聞いた。

 浦川さん 昨年のゴールデンウイーク前、店の裏を流れる川沿いを散歩していたら、生まれたばかりの3匹の子猫たちが鳴いていたんです。親猫も見当たらないし、死にそうだったので、かわいそうになって、店で飼うことにしました。

 3匹を「なむちゃん」「あみちゃん」「だぶつちゃん」と名付け、「生きらんばいけんよ」と声をかけながら、ミルクを与えるなどして懸命に育てました。その後、なむちゃんは残念ながら死んでしまったのですが、あみちゃん、だぶつちゃんは立派に育ってくれました。

 私は陶磁器メーカーで45年間、絵付け師をしていました。会社勤務時代はなかなか自分の作りたい作品ができなかったので、定年したらアトリエを開いて、好きなものを思う存分作りたいというのが夢だったんですよ。13年前、この店を出し、昔から実家では猫を飼っていて大好きなこともあって、猫をモチーフにした磁器の置物や食器などを息子と作り始めました。

 店では猫の置物の絵付け教室を開いています。息子が手びねりで作った猫の置物に、呉須という絵の具で色付けをする体験教室です。好きな模様やヒゲなどを自由に描いてもらい、こちらで釉薬をかけて焼き、後日お届けするんです。スマホで撮った飼い猫の写真を見ながら、自分の猫の模様を描く方が多いですね。あみちゃんやだぶつちゃんがそばで作業を見守ることもあります。すると、みなさん、「あらーっ」と筆を置いて、頭をなでたり、だっこしたり。そばに来るのは気が向いたときだけですけど、そうやってお客さんを喜ばせてくれています。

「かまいすぎ ストレスたまる ほっといて」

 会社に勤めていたころから、種田山頭火の俳句が好きでね。私もよく俳句を詠んでいるのですが、猫川柳を詠むのも面白くて。たとえば「この店の 売上支える 拾い猫」「かまいすぎ ストレスたまる ほっといて」「道端に ころがるだけで 人気者」とかね(笑)。猫川柳を描いた食器などの商品もあります。猫好きの方はくすっと笑ってくれて、けっこう評判いいんですよ。

 20年前、主人が脳梗塞で倒れて下半身不随になり、一昨年に亡くなるまで、ずっと介護をしながら仕事を続けてきました。自分でもよくやってきたと思います。いまはコロナ禍で、例年ならゴールデンウイーク期間中、大勢の人たちで賑わう有田陶器市が2年連続で中止になり、人出もまばら。さびしいかぎりです。店の売り上げも激減しました。

 でも、あみちゃんやだぶつちゃんがいてくれるおかげで、ストレスも和らぎ、元気も出ます。生きる糧というんでしょうか。たまに買い物に行くと、猫のエサは買い忘れないのに、自分の食べる食材は買い忘れてしまったり(笑)。この子たちのためにも、まだまだがんばらんといかんねと思っています。

【店名】「アトリエ夢」
【住所】佐賀県西松浦郡有田町上幸平1-6-5

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