日本で初めて国産カレー粉を製造販売した老舗食品メーカー「ハチ食品」(本社、大阪市西淀川区)のツイートが注目を集めています。同社の手掛けたレトルトカレーが知らぬ間に宇宙へ打ち上げられていたというのです。
ISSに浮かぶレトルトカレー
きっかけは先日地球に無事帰還した宇宙飛行士の野口聡一さんが国際宇宙ステーション(ISS)からツイッターに投稿した1枚の写真でした。
写真は4月下旬、ISSで開催された歓迎会のワンシーン。新クルー4人を迎え、総勢11人のクルーが笑顔で宇宙食を囲んでいます。中央には数種類の食品が無重力で浮いており、その中の1つに「彩りのカレー」という日本語の商品名が見えます。
これに反応したのがハチ食品公式ツイッターアカウント(@hachifoods)。野口さんの投稿を引用する形で「ハチ食品の…カレーが……宇宙に?!??!?!?!れ」とツイート。フォロワーからは「おめでとうございます!!」「NASA公認」「食べてみたくなりました」などのコメントが寄せられています。
メーカー担当者「何度も写真を拡大して確認」
興奮冷めやらぬメーカー担当者に話を聞きました。
ーーよく自社商品だと分かりましたね。
「ツイッターのフォロワーさんがいち早く発見し連絡をくださいました」
ーー写真を見た時の感想は。
「弊社のカレーをお持ちいただいたことに驚きを隠せず、何度も写真を拡大して確認しました」
ーー社内でも話題に?
「さまざまな部署から『すごい!』『彩りのカレーが浮いている…!』など驚きの声が届きました。弊社のカレーを召し上がっていただけましたこと、ハチ食品一同喜んでおります」
実は海外輸出品、日本国内での入手方法は?
同社担当者によると、写真に写っていたのは「カレー専門店の彩りのカレー」(辛口)。「畜肉由来原料一切不使用。フルーティーでスパイシーな野菜カレーです」。主にアメリカ、台湾、中国、シンガポールの小売店などで販売される海外輸出品ですが、日本国内からは同社オンラインショップで入手可能だそうです。
検査をパスすれば市販品でもOK
宇宙航空研究開発機構(JAXA)のサイトによると、ISSへ持ち込むことができる食料品は米航空宇宙局(NASA)の検査をパスした物に限られます。規定の標準食以外に、嗜好(しこう)品や宇宙飛行士が自身の好きな市販品を選べる「ボーナス食」で構成されています。宇宙飛行士の山崎直子さんは以前、市販のレトルトカレーは「そのままアルミのパックのまま持っていって、宇宙で温めて食べられる」と話していました。ちなみにISSには周囲の電子機器への影響を考え電子レンジはないため、食品の温めには電気オーブンなどを使います。
また最近では、嗜好品に含まれるものとして、食品メーカーが提案しJAXAが認証した日本人宇宙飛行士向けの「宇宙日本食」も登場しました。長期滞在の宇宙飛行士から「宇宙食のバラエティを増すこと」が要望され、2004年から宇宙日本食開発プロジェクトがスタート。例えば、ローソンレジ横のホットスナック「からあげクン」は宇宙空間用に一口サイズのフリーズドライに改良され、認証されました。2021年3月現在、「スペース日清焼そばU.F.O.」や「ホテイやきとり(たれ味)宇宙用」など47品目に上ります。
誰のお気に入りだったのか?
今回のハチ食品のレトルトカレーは標準食でも宇宙日本食でもないため、歓迎会に参加した11人のクルーのうち、誰かのボーナス食と考えられます。
では誰のボーナス食だったのでしょうか。
海外輸出品ということからも、2人の日本人宇宙飛行士以外が選んだ可能性も捨てきれません。こうなったら写真をアップした野口さんへ取材するのが一番。しかし、ISSから地球への帰還のタイミングと重なったため、残念ながら質問することは叶いませんでした。
ハチ食品担当者は宇宙から届いた突然のビッグニュースにあらためて喜びを口にしました。
「遠い宇宙にも弊社のカレーをお届けでき、国際色豊かな宇宙飛行士の方々に召し上がっていただけたのかと思うとうれしい限りです。また、ご感想がとても気になります」(同社担当者)