国内外のあらゆる場面でワンちゃんが活躍しています。ワンちゃんが活躍する場面といえば空港などが思い浮かびますが、フィンランドでは図書館で活躍する「読書犬」がいるそうです。一体、どのような活躍をしているのでしょうか。
こどもが本を朗読している間…「じっと聞く」というお仕事
読書を通じたこどもとワンちゃんとの交流のスタートは1999(平成11)年にアメリカ・ユタ州の図書館で行われたプログラム「R.E.A.D.」(Reading Education Assistance Dogs)に遡ります。今日では世界各国で読書犬が見られますが、そのうちのひとつがフィンランドです。
フィンランドの図書館へはペットも入館できるため、多くのワンちゃんがいます。そんな中、図書館で働いているのが読書犬(lukukoira・ルクコイラ)です。読書犬の仕事はこどもが本を朗読している間、じっと聞いていること。読書犬がこどもに読み聞かせするわけではありません。
「でもワンちゃんは読み間違いの訂正はできないでしょ」と思うかもしれませんが、そこがポイント。読書犬は読み間違えの訂正はできませんが、おとなしくじっと聞いているため、こどもに安心感をもたらすのです。
こどもは「間違えても注意されないんだ!」と思い、安心して朗読に取り組みます。その結果、本を読むことが楽しくなり、読書好きのこどもが育つという仕組みです。特に読書に対して自己肯定感を持たせられるのが読書犬のセールスポイントです。
それではどんなワンちゃんでも読書犬になれるか、と言うとそうではありません。フィンランド犬協会のホームページによりますと、読書犬になれるワンちゃんは2歳以上、健康で人懐っこい性格でないといけません。その上でトレーニングを行い、見事「読書犬」になれるのです。
また読書犬を教えるインストラクターは18歳以上でフィンランド犬協会の読書犬コースを受講する必要があります。このように制度が整っているため、親御さんも安心してこどもを読書犬に任せられます。
読書犬として大活躍のシルビー
ここでは読書犬として活躍するシルビーを少しだけ紹介します。シルビーは首都ヘルシンキから北東約330キロのところにあるクオピオ市の図書館で働き、今年で7年目を迎えます。普段は写真のように、こども達の読書にじっくりと耳を傾けています。
シルビーはデンマーク生まれ。「母語」であるデンマーク語の本を聴くこともあるようです。ちなみにフィンランド語はフィン=ウゴル語派、デンマーク語はゲルマン語派なので、両者は全く異なります。
シルビーは図書館や本が好きなことはもちろん、キャンプなどのアクティビティも好きなようです。シルビーの活躍を紹介するTwitterアカウントでは、雪の上を元気に散歩する姿も見られます。
日本でも広がる読書犬の動き
日本でも数年前から読書を通じたこどもとワンちゃんとの交流会が行われています。2016年に東京ビッグサイトで行われた東京国際ブックフェアでは読書犬が登場しました。
また東京都三鷹市立図書館や奈良県平群町立図書館ではワンちゃんとの本読み聞かせ会が行われ、こどもたちから好評を得ました。
現在はコロナ禍の影響により、なかなか自由に読書会をしずらい環境にあります。また日本では動物が公共施設で働いている例が少ないため、利用者に対して丁寧な説明も必要になるでしょう。
ともあれ、コロナ禍が終われば本格的に読書を通じたこどもとワンちゃんとの交流が行われることでしょう。