たっぷりのきな粉をまとった求肥に、黒蜜をタラ~とかけていただく信玄餅、おいしいですよね。ですが、きな粉からはじけるように逃げる黒蜜を、なんとか求肥にからめようと悪戦苦闘したことがあるのでは? 実は、プロでもきな粉が黒蜜にからまない問題(?)にお手上げだというツイートが話題になりました。
「きな粉には大豆の油が含まれてるので、黒蜜をかけると弾いて全部外側に流れてしまいます。
そのため召し上がった方から『きな粉と黒蜜が混ざりにくい』といったお話は多々伺いますが、自分達も全く同じ気持ちです。
信玄餅を綺麗に撮影するのは本当に大変なのでいい加減にして欲しいところです。」
うまく写真が撮れず「いい加減にしてほしい」とさえ思っているは、信玄餅で有名な金精軒(@kinseiken_jp)さんです。創業118年の山梨県にある和菓子屋さんのつぶやきに、「そうか、そうなのか。大豆の油分なのか。」「でも、とっても美味しいし、美味しそうに写っています。」「プロがいい加減にして欲しいと嘆くなら、アマの我らが苦戦するのは当然ですね」と納得しつつも、作り手もただ困っているというオチに「正直か!」というコメントも(笑)。
わがままさをお楽しみください
「きな粉と黒蜜が混ざりにくい」と言われたら、どう答えるのか金精軒のTwitter担当者さんに聞いてみたところ、
「信玄餅はきな粉と黒蜜のわがままさを楽しむ趣向となっております。しおらしく素直な峰不二子ちゃんではルパンが惹かれる魅力がないように混ざりにくいが美味しいわがままさをお楽しみいただければ幸いです。」
と、かなり個性的な返答が帰ってきました。「解決策はないんですか?」とリプにもありましたが、おすすめの食べ方はあるのでしょうか。
「撮影の際には後から黒蜜をかけますが、お召し上がりの際にはまず黒蜜をお餅に絡めてから、きなこを振りかけてください」
──なるほど。よい方法に感じます。
「とはいえ、この順番ならうまく混ざるわけでもなく、若干マシといった程度です。後から振りかけたきなこが弾かれてどんどんこぼれていきますので、なんかこう…お餅をスプーン代わりに無理やりきな粉を掬い取るような感じで…つまりその…申し上げ難いのですが皆さんが苦戦しながらお召し上がりいただくあの光景がそのままお勧めです」
──つまり、きな粉に黒蜜がはじかれちゃう~と思いながら、そのまま食べるのがおすすめということなんですね。
「ご注意いただきたいことがあるとすれば、黒蜜ときな粉を混ぜ過ぎると、きな粉の香りが感じにくくなってしまいます。黒蜜ときな粉をビニール風呂敷に包んでよく揉めば混ざるには混ざるのですが、香ばしさが減ってしまうので、お気を付けください」
──きな粉と黒蜜をモミモミする案は、やりすぎ厳禁ですね。ちなみに、ツイートにあげられていた3枚の写真はうまく撮影できたのですか?
「はい!がんばりました! とにかくシャッターを押して数を撮影し、なんとなく良い感じに撮れたものを使っています。とんかつの上にソースがかかっているような、きな粉の上に黒蜜が乗っかっているところがベストだと考えています。黒蜜がかかっていない信玄餅の写真があった場合は、『諦めた写真』の場合が多いです。」
「CMなどで食べ物の映像を撮るプロの方からは『こういうときは、きな粉と混ざりやすい真っ黒な別の液体を使って撮影しています』とアドバイスをいただいているのですが、機械油だったりするのでいまのところ使う予定はございません」
──そこは、素材にこだわる金精軒さんとして譲れないと。ツイートが話題になりました。
「これからも『短所を活かす菓子作り、人作り』を続けていきたいと改めて考えています。『きな粉と黒蜜が混ざらないのは当たり前』で、短所を消すのではなく、活かしたり楽しんだりすることで自然な菓子作り、人作りをこれからも続けていきたいです」
「あと単純にバズって嬉しいです!わぁい!」
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信玄餅の老舗の担当者さんは、とってもノリのいい人でした。現在、地元産のブランド米『梨北米こしひかり』を使ったこだわりの「極上生信玄餅」も発売中。オンラインでも買えます。チェキラ!