「え? 写真じゃないの?」リアルさに思わず驚く、イラストレーター・川村淳平さんの和食イラスト展が、「ホホホ座」(京都市左京区)で、4月4日まで開催中だ。
これは、日本のごはん文化を英語で話すための手引書『世界に教えたい日本のごはんWASHOKU』(淡交社)のために描き下ろしたメニューで、すき焼きからオムライスまで、全品、シズル感あふれるリアルさ。それを壁から浮かせて展示し、二次元と三次元の間のようなクラクラくる風景に。
同書は英文も併記されており、日本人には今さら聞けないことの答えとして、外国人にはクールで不思議な和食の知識と美味しさをイラストで図解。寿司やお米のような王道トピックスに加えて、発酵食、関西と関東の味の差、フードツーリズムなど、「英語で説明できそうで、できなかった」項目を意識して、和食を幅広く紹介しているという。
イラストは、100色を超えるカラーペンで緻密に描いたもので、具材を一品一品描き分け、プラモデルのようにパーツを組み合わせ「盛り付ける」ことにより、独特の立体感を具現している。カラーペンで多くの色を使うと、隣り合った色がにじんでしまう。パーツに分けて描くことでその欠点をクリアできるうえ、三次元の効果が生まれる。
たとえば、皿と食べ物を別々に描いて、切り抜く。カツカレーやオムライスなら、すくったスプーンが切り抜かれ、浮かんでいるように見える。ラーメンは、丼鉢から、スープ、麺、トッピングとすべてのパーツを描き分けた。その分解されたパーツも展示されており興味深い。おせち料理や会席料理の場合は、料理と器を別々に描くことで、食べ物も器もクリアに表現されている。
ファッションイラストも手掛け、ラジオ局のキャンペーンに作品を提供したこともある川村さん。まだデジタルでの画像処理が普及していなかった頃、「服がうまく描けたのに顔を失敗した、という時に、パーツを別々に描いて組み合わせることを思いついた」と言う。今となっては画像処理ソフトでなんとかなる話だが、その手法を究めに究めて、独自ワールドを拓いてしまった。公式サイトを見て、海外のモード誌から仕事依頼が舞い込むこともあるそうだ。
その驚きの制作方法は公式サイトでも明かされている。セリーヌの黒いライダースジャケットが本物そっくり。革の質感が再現される秘密が分かる(http://www.jumpei-kawamura.com/making/)。
■川村淳平イラスト展「WASHOKU」
日時:2021年3月20日(祝・土)〜4月4日(日)
時間:11:00〜19:00(最終日は18:00まで)
会場:ホホホ座浄土寺店(京都市左京区浄土寺馬場町71)
http://hohohoza.com/