就学・入園も間近なのに…「椅子に真っ直ぐに座れない!」「5分も持たない」実は原因は色々、対処法も別

西村 猛 西村 猛

巡回相談等の事業で保育園などに伺った際に、保育士さん方から「椅子にまっすぐに座れない子どもがいるのですが、どのように対応すればよいでしょうか?」というご質問をいただくことがよくあります。

「座り始めてしばらくは背中も伸びているけれど、5分も経たないうちに姿勢が崩れてくる」、「片足を上げて、足を組んだような姿勢で座る」、「背中を丸めるようにして背もたれにもたれる」など姿勢の崩れ方は様々です。真っ直ぐに座れないというと、「体幹筋が弱いからでは?」と考えてしまいがちですが、実はその原因は色々あり、また改善方法(手立て)も違ってきます。

今回は、椅子に真っ直ぐに座れない原因3つと、それぞれの原因に合わせた対応方法についてご紹介します。

真っ直ぐに座れない原因①「体幹筋の持久力が弱い」

体幹筋とは、胴体部分の筋肉のことを指し、主に腹筋と背筋で構成される筋肉の総称です。そもそも正しい姿勢の保持には、腹筋運動で必要とされるような体幹筋の「力強さ」は必要なく、「持久力」が必要になります。この持久力が弱いと、座り始めの数分は真っ直ぐに座れるけれど、しばらくすると疲れてきて、姿勢が崩れる原因になります。

<対処方法>

体幹筋の持久力を鍛えてあげることが効果的です。ただし、「仰向けに寝転んだ状態から起き上がる」ような運動は、持久力向上には効果がありませんので、そのような運動をさせる必要はありません。できれば遊びの中で、体幹筋を常に使うような機会を持たせることが効果的です。具体的には、ジャングルジム遊び、登り棒のほか、キャッチボールやドッチボールなどの「ボールを受けて、すぐに投げ返すような遊び」が効果的でしょう。また、遊ぶ時間は、15分〜20分以上を目安にしてください。

真っ直ぐに座れない原因②「体幹筋の低緊張」

低緊張とは、筋肉の張りが一般のお子さんよりも弱い(ゆるい)状態のことを指します。この筋肉の張りは、ズボンのゴムに例えると分かりやすいと思います。きつい状態(過緊張)だと、お腹に食い込みますし、ゆるい状態(低緊張)だと、ずり落ちてしまいます。筋肉の張りも、ほどほどの張力であることが最もよいのですが、低緊張のお子さんは、もともと筋肉の張りがゆるい傾向にあるため、体を真っ直ぐに保持しておくこと自体が苦手です。

<対処方法>

この筋肉の張りは、「脳からの司令」によってコントロールされているので、お子さん自身を変化させようとするのではなく、環境設定を行うことがポイントになります。具体的には、「お尻に滑り止めのマットを敷くことで、椅子に座った時お尻が前にずれるのを防ぐ」、「背中にクッションなどを当てることで、背中が伸びやすいようにする」などが効果的です。

もちろん、運動遊びを取り入れることで、筋力アップを図ることも大切ですが、低緊張タイプのお子さんの場合、激しい運動やスポーツはそもそも苦手なことが多く、そういった運動をさせることは、運動への苦手意識を助長してしまうことも考えられますので、①と同様に遊具遊びなどを通して体幹筋を活動させる習慣を持たせるのが良いでしょう。

真っ直ぐに座れない原因③「動いている刺激を求めてしまう」

①②とは少し見る視点が変わりますが、真っ直ぐに落ち着いて座れないお子さんの中には、「じっとしているのが苦手(動いている刺激を求めてしまう)」という方が一定数おられます。これは「動いているという感覚刺激を求めている」ためで、動いていることで気持ちが満足してくる、という特徴があります。

こういったお子さんの場合は「じっと椅子に座ることは苦痛」である場合が多いです。

<対処方法>

座らないといけない場面の前に、十分に体を動かす活動を取り入れておくことがその後落ち着いて座ることにつながります。具体的には、「机上課題を行う前には、屋外で十分に体を使った遊びをさせる」、「勉強机に向かわせる時は、通常の椅子ではなく、トレーニングボールなどを椅子代わりに使う」といったこともお勧めです。

特にトレーニングボールは、常に座面が動いているので、動き刺激を求めているお子さんにとっては気持ちが落ち着きやすくなり、それにより課題に集中しやすくなるという効果もあります。

まとめ

「椅子に真っ直ぐに座れない」という課題には、大きく分けて以下の3つの原因があります。

①   体幹筋の持久力が弱い

②   体幹筋の低緊張

③   動いている刺激を求めてしまう

それぞれで、対処方法が違ってきますので、まずはお子さんがどのタイプかを知り、それぞれに合った対処方法を実践していきましょう。

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