千葉県の銚子電鉄犬吠駅で10日朝、事務室の木製ドアが何者かに壊され、室内にあった運賃収入の一部、現金2400円が盗まれているのが見つかりました。銚子電鉄では昨年10月にも、盗難被害を受けて寄贈された本銚子駅の時計が再び盗まれる事件が発生。ガリッガリになるほどの赤字経営でも、「食品会社が電車を走らせている」と言われてもしぶとく笑いと自虐パワーに変え続けてきた同電鉄ですが、コロナ禍で経営状況も抜き差しならない状況に陥る中でのこの被害に、駅員らは「ただ、悲しい」と肩を落とします。
無人の駅「それでも」開け続けた
常務の柏木亮さんによると、10日朝8時ごろ出勤した清掃員が被害に気付いたといいます。犬吠駅は普段は有人駅ですが、12月に緊急事態宣言が再発令されて以降は経費節減のため、平日は無人になっていました。前日の午後9時ごろに終電の乗務員が確認した時は何も異常はなかったといいます。
「緊急事態宣言の前から、午後5時以降は無人にはなっていたんですが、構内には自動販売機もあるし、トイレもある。世間では『おせんべい屋』とか言われていますが、やはり公共交通機関として、地元の方や観光客の方が急な雨風や寒さをしのいだり、何かあったときに休んだりできる場として、夜間も開けておこうと」と柏木さん。施錠できるガラス扉もありますが、あえて開放し続けてきました。結果的にそこを狙われてしまったのです。
「ぬれ煎餅買います!」とエールも
ドアの修繕費はおおよそ10~20万円と想定。一方、コロナ禍による乗客減で経営状況は厳しさを増しています。5月に9000万円の緊急融資を受けることができ、秋にはGoTo効果で息を吹き返しかけたかに見えたのも一瞬、キャンペーン停止と共に観光客は潮が引くように消えました。赤字額は1月だけで1500万円に上る見込みとも…。
犬吠駅には、防犯カメラはなく、ちょうど設置に向けて電圧工事などに取り掛かるところでした。「でも、(被害額の)2400円とか、ドアが壊されたとか…そんなことよりも、お客様のためにと開けてきてこんなことが起きたという事実が、ただただ、悲しい」と柏木さん。被害を受け、駅は10日から夜間も施錠することになったといいます。
一方で、被害をつぶやいた同電鉄の公式ツイッターには、フォロワーやファンらから次々と「せめてもの支援にぬれせんべいを買いました!」「負けないで」などの声が続々と寄せられています。竹本勝紀社長は「皆さまの思いが、本当に、嬉しいし、ありがたい」。ちなみに、多くのニュースなどで「2400円」という被害額にも注目(?)が集まりましたが、「決して1日の売り上げじゃなくて、一部です!(全体は)もうちょっとあります!」といい、「冗談じゃないぐらい苦しい状況は変わりませんが、あきらめるわけにはいかない。一層頑張っていきます!」と力を振り絞りました。