初夏の雨が降りしきる5月、1匹の子猫がカラスに襲われかけていた。小学生たちが保護して、職員室に連れてきた。教諭のWさんは、犬や猫を飼ったことがなかったが、ひとまず子猫を預かり、動物病院に向かった。
小学生がカラスに襲われていた子猫を保護
兵庫県に住むWさんは小学校の教諭をしている。2016年5月16日、雨の夕方、数人の教え子が職員室に「猫を拾った!死んでしまうかもしれない。先生、どうしよう」と飛び込んできた。
カラスに襲われていたところを保護したという。段ボールの中には猫というより雨に濡れて小さくなった黒い塊がいた。両手ですくいあげられるくらいの大きさだった。
「金魚や小鳥などの小動物ならともかく、犬や猫は飼ったことがなく戸惑いました。しかし、放っておくこともできず、ひとまず教え子から段ボールを受け取りました」
診療費を請求しなかった獣医師
とにかく動物病院に連れて行かなくてはと思い、Wさんは雨の中、近所の動物病院に走った。死んでしまうのではないかと心配になったが、獣医師は「大丈夫、身体が温かいから生きるよ」と言った。
Wさんは、ほっと胸をなでおろした。
体重は250g、小さな女の子だった。
「獣医さんは診療費を請求されませんでした。心の温かさに救われた思いがしました」
ミルクを与えて育てるうちに情が移って
子猫はまだフードを食べられず、2、3時間おきにミルクを与えなければならなかった。獣医師に教えてもらい、Wさんはペットショップでミルクを買い、スポイトでミルクを与えた。Wさん共働きなので、日中は学校に連れていき授乳したという。よちよち歩く姿がとても可愛かったという。
「最初は里親さんを探そうと思ったのですが、世話をするうちに情が移ってしまい、うちで飼うことにしたんです」
名前は姪っ子がつけてくれた。姪っ子の名前の一部を取り、「こももちゃん」という名前にした。
こももちゃんはすくすく成長し、いまではすっかり落ち着いた大人の猫になった。