ブリーダーが捨てた思われるブランド猫の子猫たち。へその緒がついたままダンボール箱に入れて捨てられていた。発見した高校生が保護。親には反対されたが、なんとか説得し、家族で子猫たちにミルクを与えて育てた。東京都に住む下山さんは、4匹の子猫のなかから1匹をもらうことになったが、噛み癖がひどい猫だった。
へその緒がついたまま捨てられていたブランド猫
東京都の一角にブリーダーが犬や猫をたびたび遺棄する場所があるという。柄の出が悪いとか耳が折れ曲がっているとか、脚が長すぎるという理由で、売り物にならない小動物を捨てに来るそうだ。
2018年5月上旬、学校の帰りに近くを通りかかった高校生が、パチンコ屋の駐車場の前を通った時、不審なダンボール箱を発見した。ダンボール箱は、何日も放置されていたので、気になって開けてみると4匹の子猫が入っていた。家に連れて帰ると、親に「飼えない」と何度も言われたという。あきらめきれず親を説得し、動物病院に里親募集の張り紙をしてもらうことになった。4匹ともへその緒がついたままだった。4匹とも四六時中ミルクを与えて育てたという。
「あ、猫欲しい!」とは思わなかった
2018年6月、東京都に住む下山さんが取引先の会社に行くと、「猫を飼いませんか」と言われた。子猫を保護した高校生の父親が、その会社の社長で、猫を会社に連れてきて里親を探していた。下山さんは譲渡してもらうつもりはなく、最初は「困ったな」と思ったという。
「可愛かったのですが、『あ、猫欲しい!』という感じにはなりませんでした。でも、高校生がそこまでしてくれたということに心を動かされて、譲渡してもらうことにしたんです」
下山さんは、その日の夜19時くらいに猫をもらいに社長の家に行った。社長は、「確実にかわいがってくれそうな人が見つかってよかった。なかなか譲渡先が決まらず、半分くらい自分たちで飼う覚悟をしていたんです」と言った。
4匹のうち2匹が残っていて、1匹の身体の弱い子がいてなかなか目が開かなかったという。高校生は、「この子は情がわいてしょうがない。下山さんには元気なほうの子をもらってほしい」と言った。脚の長いマンチカンだった。
噛み癖のある子猫
名前はエリザベスちゃんにした。
家に連れ帰ると、最初はテーブルの下に隠れて出てこなかった。優しく話しかけていたら、膝の上に乗って熟睡した。
しばらくの間、エリザベスちゃんは、一緒に保護された子猫たちを探すように歩いて寂しそうにしていたという。
エリザベスちゃんは、食欲もあって元気だったが噛み癖があった。力加減を知らないので、下山さんの右手は傷だらけになった。下山さんは15冊くらい猫のしつけの本を買って、飼い方を勉強した。本には基本的なことしか書いていなかったが応用できたという。
「最初は面倒だな、もっと社会性を身に着けてからもらえばよかったと思うこともありましたが、手のかかる子ほど可愛らしい。存在そのものが愛おしく思えました」
8カ月もすると噛み癖は治ってきて、噛まなくなった。
「祖母は嫁入り前の娘の顔に傷がついてはいけないと心配し、保健所に持って行きなさいと言いましたが、根気強くしつけました」
エリザベスちゃんは、下山さんの首にぴったりと張り付いて寝る。家にいると後追いして離れない甘えん坊だ。