「1mあたりの値段」が新幹線より高い車両も!? 旅情あふれるだけじゃない、不思議な路面電車の世界

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日本中に張り巡らせられた線路。そこを多種多様な列車が走っています。その中でも私・バイオリン漫談家のマグナム小林は路面電車を推したいと思います。ゆったりとした速度で街の中を走っていく路面電車は、徒歩や車で見る姿とは違う街の顔を見せてくれるのです。これが路面電車の最大の魅力でしょう。

私が生まれ育ち、今もなお住んでいる千葉市にはモノレールが通っていますが、出来れば路面電車を作って貰いたかったです。今度、生まれ変わったら路面電車のある街に生まれたいですね。それほど好きです。

バイオリン片手に日本各地で公演を行っていることから、様々な路面電車に乗りました。札幌、江ノ電、豊橋、富山、京阪大津線、阪堺電軌、広島、伊予鉄、長崎の9つ。もちろん、都電荒川線、東急世田谷線にも乗っています。

東京も昔は、路面電車が今の地下鉄以上に網の目のように張り巡らされていました。最盛期には40系統があったそうです。今でも年配の方は何番の電車はどこ行き、というのを覚えている方が多いですね。私もその頃に生まれたかった。

そんな東京にも新しい路線の計画があります。晴海から銀座を通って東京駅まで行く路線が計画され、実際にもう予算もおりています。ただ、見ていると私が生きているうちに完成するかどうか……。途中でポシャらない事を祈るばかりです。

数々の路面電車の中で印象に残っているのが、京阪電鉄京津線です。まず、路面電車なのに複数の車両をつなげて一体にする連接車ではありません。普通の電車で4両編成なのがマニアの心をくすぐります。普通は連接車以外が長くても2両ですから。

浜大津駅近くの大カーブは動画撮影の名所です。私も撮った事があります。道路上に敷かれたレールの上を4両で走る姿は本当に壮観です。

京津線を走る800形は京都市営地下鉄を走る地下鉄でもあり、路面電車でもあり、そして急勾配、急カーブを走る登山電車でもあります。そのための装備を全部付けているので、車両は超高額。車両1mあたりの値段は新幹線より高いのだそう。皆さん、乗る時はありがたい物に乗せて頂いているという気持ちで乗りましょう。

次に紹介したいのが伊予鉄。ここの名物の昔のSLと客車を復元した坊ちゃん列車には何度も乗りました。SLも良いのですが、私が好きなのはレトロな客車。乗っているだけで明治、大正時代を思い出します。もっとも、その頃に私は生まれていませんが。

もう一つ伊予鉄の名物は普通の電車と路面電車の線路が直角に交わるダイヤモンドクロス。鉄道マニアとしても知られているタレントのタモリさんの大好物です。タモリさんならずともマニアはダイヤモンドクロスを通る時は、その感触を噛みしめながら乗っています。

それだけでも日本国内では希少なのですが、それにプラスして、ここは踏切があります。なので、路面電車が踏切で待たされる事があります。電車が踏切で電車を待つのは日本でここだけ。路面電車に乗って踏切で電車を待つのもまた一興です。

もう一つは富山地方鉄道市内線。ここはもともと、路面電車は富山駅の南側だけでした。富山駅から北側に伸びるJRの路線だった富山港線は富山ライトレールという路面電車に生まれ変わり、そして2020年に富山駅でその南北が繋がりました。富山は、路面電車の重要性、利便性を一番知っている街と言えます。

初めて富山に行った時はまだ南北を繋ぐ工事中でしたが、昨年9月に金沢で仕事があったので、帰りに堪らず富山で途中下車して、南北繋がった路面電車の写真を沢山撮ってきました。親しくさせて頂いている立川志の輔師匠の故郷でもあるので、志の輔師匠にいつも連れて行って欲しいとお願いしています。

松平健さんの車内アナウンスがある豊橋鉄道も良かったなあ。札幌では路面電車に乗ってススキノへ行ったなあ。なんて話をしているとキリがないのでこの辺で。路面電車はハマれば必ずお気に入りができるはずです。

◆マグナム小林(まぐなむ・こばやし) 1971年千葉県千葉市に誕生。1994年8月、立川談志に入門、2000年8月上納金未納のため破門。以降、バイオリンエンターテイナーとして活動を開始。擬音ネタや東京節にあわせたなぞかけ、バイオリンとタップダンスをあわせた芸で多くの聴衆を魅了する。落語芸術協会と東京演芸協会に所属。千葉市立千葉高校時代には野球部のキャプテンを務めた。プロレスや競馬にも造詣が深い。

▽マグナム小林さんのエッセイはこちらでもお読みいただけます
「寄席つむぎ」https://yosetumugi.com/author/mag/

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