〝幸運の鍵しっぽ〟を持つ猫 熊本地震で被災した中古レコード店で店主に寄り添う

うちの福招きねこ〜西日本編〜

西松 宏 西松 宏

 熊本市内にある中古音楽ソフト専門店「Beginners Records(ビギナーズレコード)」は、5千点以上のLP、CDなどを揃える店。「19歳から中古レコード店で働いて以来、今年で30年になる」という店長の池田倫彦さん(49)の飼い猫「おしょうゆ」(オス、4歳)は、5年前の熊本地震後に保護された子。今ではお客さんのアイドル的存在だ。アナログレコードの音色を聴きながら、ふだんは店内のこたつで丸くなっている。池田さんに、おしょうゆとの出会いや人気ぶりなどを聞いた。

(池田さん)おしょうゆは、2016年4月14、16日に起きた熊本地震後の5月、うちにやってきました。店は激震に見舞われ、建物は大丈夫でしたが、店内はレコードが散乱してぐちゃぐちゃに。後片付けが終わってしばらく経ったころ、友人が武蔵ヶ丘(熊本市北区)の原っぱで、ミャーミャーと1匹で鳴いている赤ちゃん猫を見つけて保護し、うちに連れてきたんです。

 大地震の後で母猫とはぐれたんでしょうか。まだ目も開いていない赤ちゃんでした。哺乳瓶をなんとか手に入れ、僕がミルクをあげて育てました。元々猫が好きで、縁があれば飼いたいとずっと思ってたんです。この子と会ったとき、ああ、この子だと感じました。

 僕は15年前に離婚して以来、ずっと独り身なんですけど、大震災後で周囲の人たちも慌ただしく、これからどう復興していこうかといった雰囲気が漂う中で、幼いながらもこの子がそばにいてくれたのは大きかったです。これからどうしようと先の不安をあまり考えなくて済みましたし、なにより一緒にいてくれるだけで心強かったんです。

 この毛色と柄は、真っ白の布に醤油がこぼれて乾いたときみたいやなあと(笑)。僕、料理も好きで毎日ほぼ自炊をしていまして。それで親しみをこめて「おしょうゆ」と名付けました。性格はびびりです。でも、初めて店にきたお客さんには興味津々で近づいていきます。慣れてくると今度は無視するんですけどね(笑)。

 店ではノンジャンルでいろんなBGMを流しています。この音楽を聴いたら機嫌がよくなるとかがあればいいんですが、おしょうゆは音にあまり興味ないみたい。店ではたまに知人のミュージシャンのインストアアライブをするんですけど、夜は眠いからか、演奏中も平気で寝ています。

 音楽って、決して特別なものではなく、日常のなかに自然とあるもの。店も音楽と日常がフラットな空間でありたいと思っています。それもあって、冬の間は店内にこたつを出してます。お茶でも飲みながら、好きなアナログレコードを聴いて、こたつにはみかんと猫。一度遊びに来てみらんですか?(笑)

おすすめニュース

気になるキーワード

新着ニュース