高級ラウンジの従業員女性(20)が、15分以内にテキーラのボトルを空ければ賞金をもらえるというゲームに参加した後、死亡したというニュースがSNSやネットで話題になっています。これまでの報道によると「飲みは本人が希望した」ようですが、「危ないのはわかっているから周りは止めるべきだった」「本人が同意したからいいということではない」と非難がでています。
勝手に飲んだ人が悪いのか?断れない雰囲気はいじめと同じ
今回の件で、「勝手にお酒を一気飲みした人が悪い」という考えもあるかもしれません。しかし、もし仮にこのゲームを提案されていたとすれば、「その場の空気に断れない雰囲気がある」という点が学校のいじめにも似ているように感じます。
例えば、複数の友達に嫌な事を強要され、指示された場合、「本当はやりたくないけど、場の雰囲気がしらけるのが嫌で、それをせざるを得ない」という状況です。
この集団の雰囲気には恐ろしいものがあります。ひどい場合は、断れない状況をうまく作り、万引きをさせるという事例もあります。こうなるともう犯罪です。
いじめは、最初はオモシロ半分、遊び半分でやっていたという事が多いものです。相手は本当に嫌がっていないかと気が付いてあげるべきですし、それ以前に度がすぎる場合は、やはりそこにいる誰かが「それはやめよう!」と止めるべきなのです。
お酒が弱い人にとって、一気コールの強要は恐怖
話をお酒の話に戻します。今は少なくなりましたが、数年前は大学のサークルや会社の飲み会で一気コールがよく行われていました。お酒が飲めない人にとって、強制的にお酒を飲まされるのは、恐怖です。
「断ればいいじゃない」という人もいますが、集団で迫ってくる雰囲気は、場をしらけさせたらいけなという変な気持ちが働き、なかなか断れないものです。
アルハラ(アルコールハラスメント)という言葉があります。アルハラとは、飲めないだけで怒られたり、ウーロン茶を頼もうとすると「え?ウーロン茶?ウーロンハイの間違いでしょ」とウーロンハイを頼まれたり、1杯目からお酒を頼まないと「ノリが悪い」としつこく言われたりすることです。大学のサークルでは、飲み会に救急車がくることが恒例になっていたり、「吐いて一人前」と言われ吐きながらお酒を飲んだりすることもあります。
「飲めば強くなる」は嘘
「お酒は飲めば飲むほど強くなる、だからどんどん飲め」とお酒を強要する人がいます。しかし、体質的にアルコールが弱い人はいますし、アルコールにアレルギー反応を起こす人もいます。酒造メーカーのホームページには「お酒が強いか弱いかは、遺伝子で決まっているといわれている」と紹介しているものもあります。お酒がダメといっているのに、無理やりのませる。これは完全にいけない行為です。
学校でもお酒の怖さを教えてほしいですし、いまだに社会に残っている「お酒が飲めなきゃ半人前」といったアルコールハラスメントは、もうやめにするべきです。
学校でのいじめ問題をみていると、相手にかけた言葉の意味や重みが、その場にいる人間関係によって全く変わってくるという事例が多くあります。
大人の社会でも場の雰囲気によって、受け取る人気持ちが変わってくることを経験したことがある方も多いでしょう。
「相手は嫌がってなかった」というのは、いじめやハラスメントで問題になったときによく使われる言葉ですが、行為自体は常識から逸脱していないかを考えるモラルの発達こそが、不幸な事故や悲しい事件を起こさないことにつながるのではないかと思います。