そっと触れるだけで発達障害の子どもや家族を癒やす まるで魔法…「ぐるーみん」って何?

中村 曜子 中村 曜子

 「感覚過敏」という言葉を聞いたことがありますか?人から触れられるのが苦手だったり、窓から差し込む光やトイレの流水音など、たいていの人は気にならないちょっとした刺激に、過度に敏感だったりすることを指します。アクセサリーが苦手だとか、人混みが苦手な人などは、多かれ少なかれ、感覚過敏の傾向があるといえます。

 自閉症や発達障害の人は、この感覚過敏が強い人が多いそうです。そのような特性を持つ人を「おうちで素人でも簡単にケアできる」と今、評判になっているボディケアがあります。それが「ぐるーみん」、動物の毛繕いを意味するグルーミングからとったゆる~い言葉です。

 これまで、自閉症や発達障害の人は、障害があるゆえに、姿勢や歩き方まで変わっているのだと思われがちでした。ところが「障害のある人は心身が緊張しやすく、その状態が続いた結果、体のバランスがくずれ、姿勢や歩き方がおかしくなってしまっているのです」と話すのは、ぐるーみん考案者である整体師の三宮華子さん(通称・はーにゃさん)。

 はーにゃさんは自閉症のお子さん2人を持つ母親でもあります。

 「長男は赤ちゃんの頃から触られるのが苦手。抱っこするとのけぞり、おんぶすると体をあずけることができず、直立した人形のように体を突っ張らせていました。

 さらに次男は長男以上に過敏で、頭をなでると鳥肌を立てて首をすくめ、手をつなぐと嫌がり、子守唄を歌えば耳をふさぎました。背中をトントンしようものなら、目をまん丸にして驚いて固まってしまうので、そのたびに『ごめんね』と、トントンした手を引っ込めていました」

 そのため、はーにゃさんは我が子が泣いても抱っこしてなぐさめることができず、周りからは「愛情不足」と白い目で見られることも多々あったそうです。

 はーにゃさんが体のことをケアしようと思ったのは、自分自身の体がボロボロだったから。目の疲れ、肩こり、腰痛、全身の痛み…。2人の自閉症の子どもと暮らしているのだから仕方ない、そんなふうに思っていたそうです。

 「それが、体をゆるめる整体の講座に参加したところ、強烈な肩こりがやわらぎ、歯のくいしばりが取れたのです。驚いて、当時、高校生だった長男にも練習台になって実践してみたところ、長男が何度もあくびと伸びをくり返し、全身がリラックスしているのに気づいたのです」

10分にも満たないケアでこんなに変わった!

 以後、はーにゃさんは整体の理論や技術を学び、障害のある人へのケアに本格的に取り組む準備をし、ついに整体サロンを開業。現在では年間のべ1000人を超えるペースで施術を行い、本まで出しました。

 「私一人では触れられる人数には、限りがあります。これを家で、家族がやってあげれば、月に1回、私のところに来てもらうよりもずっと効果が高くなると思い、試行錯誤して考えをまとめました」

  ぐるーみんは、やってもらう人がリラックスできて、体が整うケアです。そして、やってあげる方も、ゆらゆら揺らしたり、指先で軽くたたいたりするだけなので、疲れないし、簡単にできます。ケアする人の心身をゆるめる効果も期待でき、お子さんをケアしながら、あくびが止まらなくなる人も多いそうです。

 また「触られるのが極度に苦手」という方のために本の中では「不快にさせない触り方」も図解で詳しく説明。最初は全く触れさせてくれなかった人でも、少しずつ変わっていき、手から腕へと触らせてくれるようになり、そのうち足、背中、ついには全身ぐるーみんをしてほしがるようになります。

 こうして心身がほぐれた結果、睡眠障害が改善してよく眠れるようになったり、イライラや過食、自傷行為などの困った行動が減り、おだやかに過ごす時間が増えたりするお子さんも多いとか。

 健常な人でも、緊張が解けない人、ここ最近ぐっすり眠れていない人、やたらと疲れやすい人、巻き肩、体に厚みがない人(横から見ると薄べったい体)にも「ぐるーみん」はとても効果的だそうです。本では、自分一人でも行える「ぐるーみん体操」も紹介しています。ゆらゆら揺れて、気持ちよ~くほぐれてみませんか?

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