父が息子に弁当を作る日常…井ノ原&道枝主演映画「461個のおべんとう」原作者と監督に聞く

北村 泰介 北村 泰介

 父親が3年間、高校生の息子に弁当を作り続ける。そんな日常を描いた映画「461個のおべんとう」が6日に公開される。父親を演じるのは井ノ原快彦、息子役に道枝駿佑(関西ジャニーズJr./なにわ男子)。公開を前に、原作者のミュージシャン・渡辺俊美氏と兼重淳監督に思いを聞いた。

 渡辺氏は音楽ユニット「TOKYO No.1 SOUL SET」でギター・ボーカルとして活躍。2014年に刊行された「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」(マガジンハウス)が話題となり、同作を原作としたテレビドラマも放映された。高校生の息子のため、3年間、弁当を休まず作り続けることを約束した親子の交流がつづられている。

 渡辺氏による、実際の弁当献立の一部を紹介すると…。「オクラとニンジンの肉巻き/インゲン豆の黒胡麻和え/鰆の西京焼き/海老と青紫蘇入り玉子焼き/四色ピーマンのカラフルご飯」「鶏胸肉の照り焼き/茹でブロッコリー/ほうれん草のお浸し/海老と青紫蘇入り卵焼き/塩鮭焼き」「シシトウの柚子胡椒入り鶏つくね焼き/インゲンとニンジンの肉巻き/海老とオクラ入り卵焼き/塩鮭焼き/紫蘇わかめご飯」。バリエーションに富み、色彩や栄養バランスも考えられたおかずで弁当箱が彩られている。

 渡辺氏に今回の映画公開を踏まえて話を聞いた。

 ――故郷の福島県を襲った2011年の東日本大震災後から3年間、弁当を作り続けられたモチベーション、パワーの源泉とは?

 「震災後、故郷の事が心配でしたが、一番身近で大切な息子を守ることを優先しました。まずは息子と約束したお弁当を毎日ちゃんと作り続ける事で真の絆が生まれ、それが故郷をはじめ東日本の復興に必ず繋がると信じた力だと思います」

 ――渡辺さんが作られる弁当はおかずが多く、栄養のバランスが取れている印象ですが、大変だったことは?残ったおかずはどうされましたか?

 「不思議と一度も大変だと思った事はないです。栄養のバランスもさほど考えなかったです。ただ色んなものを食べさせたいと思う気持ちと彩りがきれいな方がおいしそうに見えて食べてくれるかなと…。余らないように作ってましたが、余ったら自分で食べてました」

 ――弁当作りから得たものとは。

 「得たものは『新しい自分』です。今までになかった出逢いや仕事が増えたことです。現在、コロナ禍の影響で今まで以上にお弁当作りをはじめ、家事全体がすごく楽しいです」

 ――撮影現場で、ご自身を演じる井ノ原さんとお会いしたそうですが、彼に期待されることは?

 「井ノ原さんは井ノ原さんのままで大丈夫です。笑顔のままで!!一つの映画として、僕自身何度もウルウルしました」

 ――映画公開に向けて。

 「この映画はお弁当の映画ではなく、素敵なファミリー映画なので家族で見に来てほしいです。ただ美味しそうなお弁当がたくさん出てくるので、空腹で来ると苦痛になるので気をつけてください(笑)!僕も、家族で見に行きます。そして感想を聞きたいです」

 兼重監督は「演出上、絶対に手を抜かないように心がけたのは『音楽』と『お弁当』です」とした上で、渡辺氏の弁当について「クオリティが非常に高く、あんなにきれいなお弁当を3年間も維持できる自信はありません(笑)。俊美さんの愛情の深さなのでしょうかね」と指摘する。

 主演の2人について、兼重監督は「井ノ原さんは、毎日いろいろな意見やアイデアを持って現場に来て下さる方で、僕の意見と彼の意見を話し合いながら場面を作って行くのがとても楽しかったです。道枝さんは素直できちんと人の話を聞ける人。井ノ原さんのナチュラルなお芝居に敵う人はいないと思いますし、道枝さんの圧倒的な透明感と実年齢17-18歳の彼が持つ危うさも幼さも大人っぽさも現在だから撮れるものだと思います。お二人で良かったです」と絶賛した。

 食べ物を映像化する上で心がけたこととは?兼重監督は「料理監修チームの皆さんらが俊美さんのお弁当写真からメニューを分析し、料理手順を解明して現場で井ノ原さんに指導して下さいました。弁当箱も俊美さんの写真に載っていた物を購入して使用しています」と明かす。

 「淡々と父親と息子の日常を描いている『だけ』です。コロナ禍で『当たり前の日常』が送れなくなった現在だからこそ、当たり前だと思っていた日常が当たり前ではなく、愛情に包まれていたのだと気づいていただけたら作り手としては幸いです」と兼重監督。コロナ時代に染みる映画となりそうだ。

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