全国の自治体が5~7月に受理した妊娠届(出すことによって母子健康手帳等が交付される)の件数が、前年同期比で11・4%も減少しました。今春拡大した新型コロナウイルス感染症が大きく影響しているのは間違いありません。近年、ただでさえ出生率低下が懸念されているわけですから、ここはアフターコロナに向けて政府のすみやかな対策が必要だと思います。
実際に今春、コロナ感染が拡大した時、不妊治療をしている人の中には「不要不急のご妊娠は一時延期を推奨する」という指導があったそうです。この「不要不急の妊娠」という表現もいかがなものかと思いますが。私の知人の中にも今春から夏にかけて出産した人が数人いましたが、立ち会い出産はダメ、身内も病院へ会いに行けない、母子ともPCR検査をしてもらえないなどを経験したそうです。妊娠の可能性がある人は飲めない薬があったりしてコロナ禍においてはいろんなリスクがあります。不妊治療をされている人は「卵子の老化」「流産率の上昇」等、ほんの数カ月でもムダに出来ない事情がそれぞれにあります。これはもう切実な問題です。でもそれ以外の人は「何も今産まなくても」と考える人がいるのもうなずけます。
アフターコロナになれば出生数が増えるという楽観視は決して出来ません。自粛による経済の疲弊で子育てにかかる金銭的な不安もその理由の一つです。とある専門家の「女性の性格に対する迷信がうたわれた丙午(ひのえうま)の1966年は出生率が1・58に落ちたけれど、翌67年には2・23に上昇したので今回もコロナが終われば回復するだろう」という楽観的な意見を拝見しましたが、当時と今ではあまりに時代背景が違います。だいたい人は国の為に子供を産むのではありません。それぞれの価値観、幸福感が大事な要素なのです。
政府は2年後に不妊治療の公的医療保険の適用を目指すとしています。コロナ禍の今、それだけでなく、安心して子供を産み育てるための金銭的補助が必要だと感じます。「GoToキャンペーン」もいいけれど、まず出産、子育て支援のための予算を組んでもらいたい。出産費用の補助や勤務体制、待機児童対策など、先手先手を打った対策が必要ではないでしょうか。出生率低下がこれだけ明確になっているのですから、決して楽観視せず具体的な対策を早期に取って頂きたいと切望します。