N・キッドマン主演映画「ストレイ・ドッグ」公開前、小川泰平氏が日米捜査方法の違いを解説

小川 泰平 小川 泰平

 オスカー女優ニコール・キッドマンが初の刑事役に挑戦し、その熱演によってゴールデングローブ賞主演女優賞候補となった映画「ストレイ・ドッグ」が23日から都内の「TOHOシネマズ シャンテ」ほか全国で順次公開される。試写会に参加した、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は22日、当サイトの取材に対し、同じ刑事の立場から今作の見どころを語り、日米の捜査方法の違いについて解説した。

 キッドマンは、17年前に犯罪組織への潜入捜査に失敗し、その罪悪感を抱えるLA市警の女性刑事エリン・ベルを演じる。酒に溺れ、同僚や元夫、娘からも疎まれる中年の女性刑事を演じるため、特殊メイクで容貌を大きく変え、激しい暴力シーンや銃撃戦にも挑戦し、迫真の演技として高い評価を得ている。

 試写で鑑賞した小川氏は「今作を見た時に驚くのは、初の刑事役に挑んだキッドマンの変貌ぶりです。特殊メイクだと思いますが、疲れ切った刑事らしさがよく出ていた。17年前の潜入捜査に失敗したが、まだ事件は終わっておらず、あることがきっかけで再捜査というか、忘れ物を取りにいくみたいなことが始まるわけですけど、潜入捜査の時代と現在が映画の中で行き来する構成が見事です。その独特のテンポに、見ている者はスクリーンへと吸い込まれていく感じがしました」と感想を語った。

 さらに、同氏は「キッドマンはLA市警の女性刑事ですが、疎外された家庭環境の中、17年前と今が行き来しながら、最後に大どんでん返しが待っている。過去と現在が行ったり来たしますから、最初からよーく見ておく必要があります」と付け加えた。

 ここで注目したいのが作品で描かれる「潜入捜査」だ。警察の捜査手法が日米ではどのように違うのだろうか。

 小川氏は「潜入捜査は米国独特の捜査手法であって、日本の警察ではいまだにおとり捜査も潜入捜査も認められていない。強いて言うと、刑事自身が潜入捜査はしないが、内部にいる者を『S(エス)』、つまりスパイとして使うことはよくあります。捜査協力者以上に、エスと称される者を使う。内部の事情を探るため、特に組織犯罪、外国人犯罪、暴力団捜査、薬物捜査などにはエスを使っている」と解説した。

 また、小川氏は「日本では実際に刑事自らが潜入捜査をすることはないですが、実際にコンビニの店員や駅員などに扮したり、変装して捜査対象の行動を確認するため、その場に潜入することはある。私も実際にやったことがあります。駅員になって駅構内の掃除をしたり、競輪や競馬場の『煮込屋さん』の店員に扮したり、というようなことはやりました」と明かした。

 ただし、事前に用意周到な準備がされている。小川氏は「当然、店や駅などの許可を得ています。潜入というわけではなく、承諾を取って協力してもらいながらやるという感じです。マトリは許可を取った上で現金や覚醒剤を所持して捜査に当たることはやってますが、警察はそこまでは認められていない」と補足した。

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