拒否、居留守、罵られ、顔写真まで撮影されて…報酬は? 過酷な「国勢調査員」の体験描いた漫画が話題

金井 かおる 金井 かおる

 国勢調査の調査員「国勢調査員」の体験を描いた漫画がインターネット上で話題です。作者は、web漫画家えむふじんさん。「少しでも多くの方に調査員のことを知っていただきたくて漫画を描きました」という作品とはーー。

ご存じでしたか?業務内容

 国勢調査は、統計法に基づいて実施される5年に1度の最も重要な統計調査です。日本に住む全ての人と世帯が対象。結果は国や自治体だけでなく、民間企業の出店計画などにも利用されます。

 回答期間の10月7日が過ぎ、8日からは「提出のお願い」業務が始まる…はずでした。しかし総務省は7日、回答率が伸び悩んだためインターネットと郵送回答の締め切りを20日まで延長する方針を決定しました。

 そもそも国勢調査員のお仕事とは?

 「担当する地域内を巡回して居住の実態を確認し、各世帯に調査書類を配布します。回答が確認できない世帯については、調査員が回答のお願いに伺います。また、世帯から調査員に提出された調査票を整理し、市区町村に提出します」(国勢調査ホームページより)

 コロナ禍ということもありオンライン回答が推奨されましたが、調査票を全戸に配布するのは全て国勢調査員のお仕事。全国約61万人の調査員による人海戦術です。集合住宅では隣人の顔すら知らない、なんてことが珍しくない現代。対面での説明や催促の大変さは想像に難くありません。

拒否、居留守、罵られ…

 えむふじんさんは自身のブログ「えむふじんがあらわれた」に9月15日から18日まで、4回に分けて調査員の漫画を投稿。夫婦で調査員になった理由から実際の業務やハプニング体験談、報酬金額まで、経験してみないと分からない調査員の舞台裏を描いています。

 まずは調査員の説明会。「調査を拒否された時はどうしたらいいんでしょうか?」の質問に担当者のアドバイスは「『法律で定められているので』と丁寧に何度かお願いしてみてください」。

 次に「地図作り」。担当地域の全戸を一軒一軒見て回り、家があるか、人が住んでいるか調べ、白地図に書き込むという下準備があるそうです。これも調査員のお仕事だったんですね。

 いよいよ調査票の配布。拒否、居留守、罵られ…挙げ句の果てには「怪しいから」と顔写真を撮影されたことも。

 だからこそ「暑い中お疲れ様。来てくれてありがとう」というちょっとしたひと言が胸に刺さったといいます。

 配布が終了したら、次は回答の催促状配りが待っています。

 ついに最終日。貸与されたバッグや腕章などを返却し、しばらくすると報酬が振り込まれました。作品の中では具体的な金額まで触れられています。

「高齢の調査員…ただただ感謝です」

 ブログやSNSには、同業の調査員や役所担当者、住民など、さまざまな立場の人からコメントが寄せられています。「知らなかった」「冷たい態度をとったこと反省」「ほんとうにこの通り」「全部ネットにして欲しい」など、驚きや賛同の声が並びます。

 今回の国勢調査では、コロナ対策以外にも調査員の高齢化や回答拒否の急増など、新たな問題が浮き彫りになりました。えむふじんさんに調査員に伝えたいことを尋ねてみると、「ご高齢の方がされている事も多いので、ただただ感謝です」。

 一方、提出する側の住民には、「なかなか実感は湧かないかもしれませんが、統計調査から得られる情報は我々の生活を支える基礎になり得る情報です。例えば我々が受ける様々な行政サービスの多くが、この数字を元に行われています。私は統計調査員を辞めたのでお願いするような立場ではございませんが、各種調査へのご協力をお願いします」(えむふじんさん)。

「事務的な対応だけで有難い」

 えむふじんさんはブログで次のように振り返ります。

 「漫画にしたような『眼前での攻撃的な振る舞いや態度』は人生で初めて経験する全く異質のキツさでした。二人とも帰宅してからもひどく落ち込み、また何でもない時にその言葉を事を思い出しもしました。私たち夫婦に限った事で言えば『優しくして欲しい』とは言いません。突然訪問して家族の構成を尋ねられれば、怪しむのも仕方ないと思います。でも統計調査員と分かれば、どうか事務的に対応してください。それだけで有難いです」

■コミックエッセイ えむふじんがあらわれた http://mfujin.blog.jp/

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■書籍「小学生エムモトえむみの勝手きままライフ」(えむふじん・著、KADOKAWA)発売中

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