猫カフェの前に、生まれて間もない子猫の兄弟が捨てられていた。まだ授乳が必要だったので、2匹は動物病院で育てられた。元気になったら猫カフェデビューする予定だったが、食が細く成長しないので、なかなかデビューできなかった。
猫カフェの前に置き去りにされた兄弟猫
2019年5月、山梨県の猫カフェの店舗前に段ボール箱に入れ、置き去りにされた2匹の兄弟猫がいた。生後2~3週齢で、まだ授乳が必要だったので、猫カフェのかかりつけの動物病院で授乳して、お世話をしてもらったが、離乳したばかりの頃、体調を崩しがちになった。
たびたび下痢や食欲不振に陥ったが、検査をしてもこれといった原因が見つからず、小さい手に点滴をつなぎ、衰弱しないよう治療を受けていた。兄弟猫は成長したら猫カフェにデビューすることになっていたが、明らかに成長不良で、体格も小さく、毛も薄く、か細い声で鳴いていた。療法食やウエットフードを与えてもがっつくことはなく、食も細かったという。
このままだと死んでしまうかもしれない
山梨県に住む鈴木さんは、兄弟猫を預かっていた動物病院に勤める知人に何度も子猫たちの様子を見せてもらっていた。生後半年くらいになっても、猫カフェにデビューするのが難しい状況だった。
「このままだと衰弱して死んでしまうかもしれない。でも、私が世話をしたいと思い、成長不良の子猫を引き取ったんです。他の子は猫カフェにデビューできるけど、この子だけは難しかったのです。人がいつもそばにいるなら、少しは食欲も出るのではないかと思い、引き取ることを申し出ました」
鈴木さんは、11月、生後5、6カ月の時に子猫を引き取ったが、まだ生後2、3カ月くらいの大きさで、育つかどうか心配だったという。
白とグレーの毛色で、家に迎えたのが11月下旬。小雨がたびたび降っていたので、時雨(しぐれ)くんという名前にした。
療法食をやめたらがつがつ食べるように
時雨くんは人慣れしているせいか、抱かれると安心するようで、腕の中で寝ていることが多かった。起きると部屋の中をゆっくり探検し、目新しい景色を楽しんでいるようだった。鈴木さん宅には先住犬がいたので、初日は匂いを嗅がれた。時雨君は驚いてシャーっと言ったが、同じ空間にいることにはすぐに慣れた。同じベットで少しだけ間をあけて寝るようなこともあった。
食は細く、成長に必要な量を全部食べることはなかった。お腹を壊さないよう療法食を食べていたが、ふやかして潰したり、手であげてみたり、工夫をしてみたが、たくさん食べることはなかった。
しかし、鈴木家に来て1週間ほどすると、犬のごはんに興味を示すようになった。鈴木さんは、時雨くんになんとか食べてほしいと思い、お腹の調子も安定していたため、療法食以外のごはんも試そうと、子猫用のパウチを買ってきて与えてみた。すると、時雨くんは、今まで見たことがない勢いで平らげた。あまりに食いつきがいいので、ドライフードも与えてみたら、そのまま食べた。それ以降、ドライフードを一気に食べてしまうほどになった。1歳を過ぎでも体重3kgにも満たない小柄な体格だが、それでも鈴木家に来てからだいぶ大きくなったという。
温厚で人のそばにいるのが好き。食欲旺盛。犬のようにご飯を平らげる。少し体格も大きくなっていろんなところに乗れるようになり、キッチンやテーブルの上ものにいたずらをする。
鈴木さんは、時雨くんを迎えて家族が増え、より一層にぎやかになったように感じている。先住犬はつかず離れずパートナーのような存在だが、時雨くんはよくくっついて甘えてくるので子供のようだという。