「り~んりん♪」風流な車内放送やなぁ→えっ、本物の鈴虫が網棚に!「北条鉄道」のスズムシ列車

太田 浩子 太田 浩子

 ちょっぴり秋の気配が感じられるようになってきた夏の終わりに、北条鉄道に乗った「椿ティドットコムtsubakit.com@鉄道交通旅街垢」(@tsubakit_tetsu)さん。

「北条鉄道車内。
涼を感じさせる鈴虫の声が聞こえる…。
『風流な車内放送やなぁ。』
と思いながら網棚を見たら
本物の鈴虫がいてワロタ。」

 投稿された写真には、流れる車窓の上の網棚に、かわいらしいサイズの虫かごがちょこんと置かれています。「北条鉄道さんが車内で鈴虫を飼われている事を知らなくて。始発の粟生駅で乗車した時から鈴虫の鳴き声がずっと車内に鳴り響いていたんです。『どこから鳴り響いているのだろうか?』と思いながら車内を見回したら、網棚上に『本物の鈴虫』を見つけました。鈴虫は秋の到来を感じさせて心を揺り動かされますね」と椿ティドットコムさん。ツイートには「列車内に鈴虫を置くとは…なんとも風流…」「すごいサービス…」とコメントがつきました。

 兵庫県のローカル線・北条鉄道は、「粟生駅」(小野市)から「北条町駅」(加西市)を結ぶ単線で、9月1日から運用されている「行き違い設備」に全国初の保安システム「票券指令閉そく式」を採用したことでも注目されています。大阪府内に住み、休日は列車に乗る「休日鉄」だというツイ主さんも、「行き違い設備」を見に訪れたそう。北条鉄道に乗るのは2度目だそうで、魅力について「ローカル色が溢れている事ですね。短距離(13.6km)でディーゼルカー1両だけ。また全国初の保安システムを採用した法華口駅行き違い設備もそのひとつでしょう。」と話してくれました。

 第3セクターが経営する北条鉄道は、ボランティア駅長とサポーターの活躍も知られています。鈴虫を車内に乗せているのは、田原駅のボランティア駅長を14年間務める小林桂(かつら)さん。もともとお子さんが幼稚園に入った約40年前に、10匹ほどの鈴虫を親戚からもらったのがきっかけで「僕もいい音色で癒されると思ってね。飼い続けていたら増えるし、この鈴虫をいかそうと思って、退職してから市内の幼稚園児にプレゼントしたりして。駅長になってからは北条鉄道にも鈴虫を乗せてもらって、現在にいたります」と話します。

 繁殖のために鳴くのはオスの鈴虫だけで、10月頃には死んでしまうそう。一方、メスは越冬して土の中に産卵します。冬の間に土の湿度を管理できれば、卵が孵化して鈴虫を増やすことができるとのこと。小林さんは、鈴虫の飼育を通じて命の大切さを学ぶ「神戸新聞加古川鈴虫学校」(神戸新聞社主催)の講師も続けていて、多い時には数万匹の鈴虫を飼っていたこともあるそうです。

 今年も8月から北条鉄道の列車に鈴虫が乗せられ、3日に1度くらいの頻度で小林さんがエサの交換をしています。スズムシ列車が走るのは9月末までの予定。夜行性で昼間はあまり鳴かないので、音色を楽しむなら朝夕の乗車がおすすめです。

 ◇ ◇

 椿ティドットコムさんに好きな鉄道を聞きました。
「関西だと信楽高原鐵道(滋賀県)、紀州鉄道(和歌山県)、水間鉄道(大阪府)など。他地域だと高松琴平電気鉄道(ことでん・香川県)や岳南電車(静岡県)など…短距離・短編成で運行している地方鉄道が好きです。過疎化やコロナ禍など厳しい経営環境でもイベント開催やグッズ販売等をして少しでも収益を上げようとする姿勢も素晴らしくて応援したくなります。ただ、JRさんなどの大手鉄道会社が嫌いと言うわけではありません」

■ 椿ティドットコム(ニッポンの鉄道を好き勝手に応援したい!)ブログ https://tsubakit.com/

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