「及位」…この名字、読めますか? 姓氏研究家・森岡浩氏が日本人の難読名字を紹介します。
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漢字からは全く読みが想像できない難読名字だが、JR奥羽本線に及位駅があり、難読駅として有名なことから、鉄道マニアなら知っている人が多い。これで「のぞき」と読む。
及位駅があるのは山形県最上郡真室川町及位。1日平均の利用者は20人ほどという小さな無人駅だ。近くの甑山(こしきやま)は中世には修験道の修行の場であったといい、断崖に宙づりになった状態で山中の赤穴とよばれる岩穴をのぞくことが最高の難行とされた。これを達成した修験者がのちに高い位に及んだことから、「及位」という地名が生まれたという。
ただし、名字としての「及位」は秋田県に多く、秋田市と三種町に集中している。実は、秋田県にも由利本荘市及位という地名がある。こちらはおそらく古くからあった「のぞき」という地名に、有名な「及位」という漢字をあてたものだろう。「のぞき」という地名の由来には諸説あるが、浸食されてできた山間の地形を指すといわれている。