「別に暗い話じゃないんですけど、小5のときに母親が駆け落ちして家からいなくなりまして」
そう話すのは、神戸を拠点に活動する音楽バンド「ワタナベフラワー」のボーカル、クマガイタツロウさん。「ワクワクロックンロールバンド」を名乗り、見た目通りの明るいキャラクターで、音楽以外の分野でもマルチに活動する人気者だ。
そのクマガイさんがこの夏、かつての自分と同じような境遇で、寂しい思いをしているかもしれない子供たちに無料でカレーを提供する取り組み「ICHIZENプロジェクト」を始めた。母親がおらず、長距離トラック運転手の父親は3日に1回しか帰ってこなかった子供時代。そんなとき、友人のお母さんたちが気に掛けて食事に呼んでくれたことが忘れられないという。「大人になった今、たくさんの大人たちが支えてくれたことにあらためて感謝している。今度は僕が子供たちにその恩をつないでいきたい」
プロジェクトは、明石市の明石公園にあるテイクアウトショップ「TTT」で、8月3日から開始。「ICHIZENカレー」(税別800円)を注文すると、1皿につきチケット1枚が店内に掲示される仕組みで、中学生以下の子供はそのチケットをレジに持参すればカレーを無料で食べることができる。
1年前から構想を温めていたというクマガイさん。トマトとタマネギは神戸市北区の農家から提供を受け、レシピ作りは大阪のスパイスカレー店「堕天使かっきー」が協力。調理は明石市の明石キャッスルホテルが担当するなど、多くの仲間の力を借りて実現にこぎ着けた。「子供だけではなく、大人も楽しんで参加できるプロジェクトにしたい」と話し、今後も協賛や実施店舗などを募りながら支援の輪を広げていくという。
「19歳で家を出るまで、弟と2人で家のことを全部やってきた。大変だったけど、周りの大人たちが気に掛けてくれたことで救われた部分もたくさんある」と振り返るクマガイさん。出身地である西宮には「僕を育ててくれた“お母さん”がいっぱいいるんですよ」と笑う。
「このプロジェクトが、地域のみんなで子育てをする雰囲気づくりの後押しになればいいなと願っています」
問い合わせはメールで。ichizen@watanabeflower.com(担当・川上さん)
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