トンボ玉とは色とりどりの模様を描いたガラス細工で、アクセサリーや工芸品として昔から愛されていますが、とあるトンボ玉作家の作品が話題になっています。
「金魚玉」と銘打たれたこちらの作品。直径約3センチほどの小さな球体の中には、水中を優雅に泳ぐ2匹の金魚をはじめ、水草や砂なども緻密に作り込まれていて、まるで本物の水中世界をそのままガラスの中に閉じ込めたかのような作品になっています。
そのあまりのリアルさと美しさに、「キレイ……」「水や水の温度までが伝わってきそうです。」「大きさといい緻密さといい、ホント手にとってずっと眺めていたい作品」などの絶賛コメントと共に6万いいねが付きました。このトンボ玉の作者である生物系ガラス作家の増永元さん(@masunaga_gen)にお話を聞きました。
──こちらの作品のテーマは何でしょう?
作品名の「金魚玉」は、江戸時代に流行した紐で吊るして金魚を運搬・鑑賞するガラス製で球形の金魚鉢の呼び名です。そんな昔の風流な金魚鑑賞風景をイメージしながら作りました。
「金魚玉」はもともと2009年に妻に頼まれて試作してみたのが最初で、ブログに写真を載せたところ大きな反響をいただき、2013年と2016年にも制作しましたが、今回発表したものは金魚や背景の雰囲気を変更した最新作になります。
──金魚のウロコや水草の細部までものすごくリアルに作り込まれていますが、こちらは全てガラスで作られているのですか?
はい! 全てガラスだけでできています。基本的にランプワークという手法で作っていますが、作りたいものに合わせて細かな制作工程を独自に考案しています。ちなみに、金魚は以前飼っていたクロランチュウたちを思い出しながら作った架空の品種になります。水草の方はうちの水槽に入っているマツモを見ながら作りました。
──すごい技術ですね! 制作過程の中でこだわったところや難しかったところはありますか?
作品を作るときはいつも生き物が作り物に見えないように生命感に一番こだわっていますし、難しいところでもあります。小さな作品なのでとにかく窮屈にならないよう空間の広がりを意識して制作しました。
──特にここを見てほしいというポイントはありますか?
立体作品なので金魚の影や奥行き、気泡に光があたったときのキラキラ感など、全体の雰囲気を見てもらったあと、ルーペで拡大して金魚の細部までじっくり観察してもらえたら嬉しいです。
──増永さんは“生物系ガラス作家”とのことですが、なぜ生き物を専門に?
実はガラス作家になる前はウミヘビの生態研究者だったんです。一応、生物学の博士なので(笑)。
──大胆な転身ですね(笑)。
あまり注目されていない身近な生き物たちの魅力を自分なりの方法で伝えたいと思ったのが創作の原点です。今は生物系ガラス作家として、小さなガラス玉の中に様々な生き物の姿を環境ごと、永久に記録していく作風で、創作活動をしています。
──Twitterではすごく話題になりましたね。
Twitterは今年になって始めたばかりなのですが、こんなにたくさんの反響があり、ただただ驚いています(汗)。でもたくさんの方に僕の作品を見てもらえてとても嬉しいですし、作品を通して様々な生き物たちの世界を知ってもらえたらいいなと思っています。