はじめに
保育園や幼稚園を訪問していると、「何もないところでスグに転んだり、真っ直ぐ立っていてもグラグラと体が揺れたりすることが良くあるのですが、何か体の問題でしょうか?」というご質問をよくいただくことがあります。
何かの病気?と心配になるかもしれませんが、実は「足の裏にあるセンサーが上手く働いていない」ことが一番の原因になっていることが多いのです。このセンサーは「メカノレセプター(感覚受容器)」と呼ばれ、バランス良く立ったり、転ばずに歩いたりするのに重要な役割を果たすのですが、これを鍛えるカギが「裸足」なのです。
メカノレセプターは、足の裏にあるセンサー
メカノレセプターは、足の裏、特に親指の裏と、足裏の指の付け根の盛り上がった部分、そして踵のあたりに多くあります。
メカノレセプターの役割は、バランスを保つために大切な、「足のどこにどのくらい体重がかかっているか」を察知することです。体重がかかるなどの刺激が入ると、メカノレセプターがそれを察知し、情報を脳へと伝達します。脳はその情報を受け、「体が傾いている」ということを理解し、「転ばないためには、もう少し右の足に力を入れて踏ん張れ」などどと体の各部分に指示を出します。そして脳からの司令を受けた体の各部分が協調して働くことで、体をまっすぐに保ったり、バランスを取ることができます。
つまり、メカノレセプターは、真っ直ぐに立ったり、転ばずに歩くための「情報集約センター」なのです。
メカノレセプターは、足の指を使えば強化できる。でも使わないとスグにサボる
何もないところでスグに転ぶなどのお子さんは、メカノレセプターが上手く働いていないことが考えられます。
メカノレセプターは、足の指を良く使うことで、活性化します。反対に足の指を使う機会が少なくなると、すぐに機能が低下してしまうという特徴があります。例えば、足を骨折した人がギプスが取れたあと、リハビリを始めると片足立ちがすっかりできなくなっていることが多くあります。
これは、ギプスをしている間、足の指を使う機会が少なくなったため、メカノレセプターがサボってしまったことが理由です。そのため、リハビリでは、メカノレセプターを弱らせないために、ギプスを巻いている時から、足の指を使う練習を行います。
子どものメカノレセプターについても同じことが言えます。足の指を積極的に使わせることで、メカノレセプターが活性化し、立位バランスが改善したり、転びにくい体になったりしていくことが期待できます。裸足で過ごせば、靴下を履いている時よりも足指を動かしやすく、足指を使う機会も増える―というわけです。
メカノレセプターを鍛える簡単で効果的な運動方法
それでは、お家でできるメカノレセプターの鍛え方について、3つご紹介します。
子どもの場合飽きてしまうなどの理由から、大人のリハビリのような方法ではなく、遊びの中で足の指を使う機会を持たせましょう。いずれも裸足で行うとより効果的です。
1.足指じゃんけん
足の指をグー・チョキ・パーの形に動かします。片足立ちバランスが苦手なお子さんの場合、足指じゃんけんが難しいことが多いです。難しくても、繰り返し行うことで、少しずつ動かせるようになってきます。
単にじゃんけんを行うだけだと飽きてしまいますので、あっち向いてホイなど、他の遊びと組み合わせてみましょう。
2.足指でタオルの引っ張り合い
椅子または床の上に向かい合って座り、足の親指(第1指)と人差し指(第2指)でタオルをはさみ、綱引きのようにお互いにタオルを引っ張り合います。
タオルを取られないようにしっかり指で握り込むことで、メカノレセプターに刺激が入ります。
3.立った状態で尺取虫
床の上に立ち、足の指を尺取り虫のように動かすことで、前に進んでいきます。その際、足の裏は床から離さず、足の指だけを曲げ伸ばしすることで進むようにしましょう。
はじめはなかなか進めないかもしれませんが、繰り返しているうちに(コツがつかめると)少しずつ前に進むことができるようになります。親子やご兄弟と競い合うことで、飽きずに取り組めます。
これらの遊びは、大人の方のメカノレセプターを鍛えることにも効果的です。コロナ禍の外出自粛ですっかり運動不足になった方も少なくないのでは。ぜひ、親子で取り組んでみましょう。