災いを予言する妖怪の「剥製」が展示中!?…写真撮影でご利益も コロナ退散願いモンスターが姫路に集結

國松 珠実 國松 珠実

姫路城の北隣にある「兵庫県立歴史博物館」で開催中の特別展「驚異と怪異 ―モンスターたちは告げる―」が不気味で、夏にぴったりと評判だ。疫病を予言する妖怪としてすっかり有名になった「アマビエ」の他に、同じく未来を予言する頭は人間、体は牛という「件(くだん)」の、なんと実物が展示されている。さっそく行ってみた。

 将来を予言する「件」

「件」をご存知だろうか?

件とは牛から生まれた、頭が人間、体が牛という半人半獣の妖怪。頭が牛、体が人間の場合もある。数日ほどしか生きられないが、その間に将来を予言し、それは必ず当たるという。

展覧会では、江戸中期に「当面災いが起こるが、自分の絵姿を見た者は災いから逃れられる」と予言して死んだ件の話が紹介されている。それは現代の新型コロナウイルスの拡散とともに広まった「アマビエ」を連想させる。

岡山を中心に各地に目撃談がある件だが、会場にはなんと「件の剝製」(個人蔵)が展示されている。しかも写真撮影OK!そこには件の画像を持ち歩き、みんなでコロナ禍を乗り切ろうという出展者の願いが込められている。

こうした予言を行う妖怪は西洋でも多く見られる。特別展のタイトルにある「モンスター」の語源は「モンストルム」。警告や凶兆という意味のラテン語だ。特に東アジアでは、現実にはありえないような現象や事実を「怪異」として、天や神仏からの警告ととらえてきた。

 恐れ敬い、親しまれてきたモノたち

他に興味深いものに、中国の妖怪『無支祈(むしき)図』がある。『阿Q正伝』で有名な小説家、魯迅も孫悟空のモデルといった無支祈だが、日本で描かれたものは大変珍しい。

稲妻とともに天から落ちてきたという「雷獣(らいじゅう)」の絵は、地元の人たちが実際に捕らえたモノを描いたという。

江戸時代の頃は、学者が伝承とされた妖怪を探し歩き、その姿をさかんに描いたという。今ではよく親しまれている「河童(かっぱ)」も、当時よく描かれた妖怪だ。

思いがけない幸運のことを、「勿怪(もっけ)の幸い」という。この「勿怪」とは妖怪の意味だ。

平安時代の頃は、人にとり憑きたたりをなす死霊や生霊を「もののけ(物の怪)」と呼び、それが「もっけ(勿怪)」に変化して人々に恐れられた。ところが、妖怪はふいに現れるというところから「思いがけないこと」「予期せぬもの」へと意味が転じていく。

ただ恐怖だったモノから、時代を経てどことなく愛嬌のあるモノへ。人々の妖怪への見方や感じ方が変わっていく様子がわかる展示だ。

会場には河童や天狗といった日本の妖怪や、海外の不可思議なモノや怪物を描いた絵画や人形、仮面など数多く展示されている。昨年、国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開催された特別展の巡回だが、より日本の妖怪にクローズアップしている。

■兵庫県立歴史博物館ホームページ
https://www.hyogo-c.ed.jp/~rekihaku-bo/index.html

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