いまだ感染者ゼロの岩手県…人口5500人の村の斜め上行く啓発ポスターが「鉄壁の守り」と話題

広畑 千春 広畑 千春

 新型コロナウイルスの感染拡大が続き、緊急事態宣言が全国に発出される中、唯一感染者ゼロを続ける岩手県。その県北にある九戸村の感染防止啓発ポスターが、見た目の斜め上感と内容の真剣さで、ネット上で話題になっている。著作権の厳しい現代にあって「二次利用も何でもOK」という大判振る舞いには「“鉄壁の守り”で岩手から感染者ゼロを全国に広げていく」という熱い思いが。制作の経緯を聞いた。

 九戸村は人口約5500人(2019年)といい、人口密度は1平方キロメートルあたり43.8人(2015年調査、全国平均340.8人)。基幹産業の養鶏は全国でも有数の規模で、ブランド鶏「あべどり」はトランプ米大統領が訪日した際にも提供されたという。

 ポスターは、村の商工会青年部が雄鶏からインスパイアして作ったというクセの強いキャラ「キングオブチキン」(通称オブチキ)が主役だ。頭だけニワトリのかぶり物に下はワイシャツ、スラックス姿で、全身をしならせ、時に恥じらい(?)ながら、爪や指の間、手の甲、手首まで洗う正しい手洗い「チキント手アライ」を「チキントヤロウ」と啓発。飛沫感染を防ぐ2mのソーシャルディスタンスを「卵40個分」で表現し、古代エジプトの壁画に描かれた王の姿(確かに似てる)のイラストで密閉・密集・密接の「3密」を説明したかと思えば、それを避けるようものすごい圧で訴える。

 デザインを手がけたサトウコウスケさんは、女優・のんさんが主演したNHK朝ドラ「あまちゃん」の関連グッズ等も手がけたアートディレクター。17日に自身のツイッターにポスターを投稿したところ「全国に貼りたいレベル」「岩手に続け!」などの声が相次いでいる。

―まず、この夢に出て来そうなキャラクターは何者なんでしょう…

「これは地元の観光誘致や特産品PRに貢献し、地域の活力になるものを、と1年ほど前に作ったキャラです。最初は二次元だけで、グッズやイラストのほか、ついたてでビアガーデン等に出没していたんですが、コロナの感染拡大でそうしたPRもしにくい中、『自分たちにできることを』と新たに着ぐるみを作り、ポスターを制作することにしました」

―なんともエッジの効いたというかダジャレ祭りというか…でも内容は本気ですね

「ありがとうございます。子どもも不安感が高まっていますし、楽しさを交えつつ、大切なことをしっかり伝えたくて。普段からこういうことばっかり考えてるんで、言葉やポーズを考えるのも、撮影もそんなに時間はかかりませんでした。ちなみにチキンの中の人は青年部の部長です(笑)」

 日本の原風景ともいえる農村地帯が広がる九戸村だが、感染を防ぐためイベント等は中止し「人がいるのはスーパーや学校ぐらい。休日もほぼ外出していない」とサトウさん。学校は授業を続けているが、手洗い・うがいや消毒、ソーシャルディスタンス等かなり気を遣っており「感染者ゼロだからこそ余計に、村民の感染防止への意識はとても高い」という。

 今回のポスターは「あえて余白スペースを作ったので、自分で作ったかのように使えます!みんなが一丸となって乗り切りましょう」とサトウさん。そういえば九戸村は戦国時代、天下統一を目指す豊臣秀吉に対し、最後の組織的抵抗を行った九戸政実の居城があった土地とか。でも、コロナとの闘いは負けるわけにはいきません。ここから鉄壁の守りを全国に広げ、感染者0が広がった暁には…。「そうなったらまた、九戸にも来てみてくださいね。日本一の甘茶や美しい自然、道の駅…魅力が満載ですよ」(サトウさん)。

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