昭和の広島カープ黄金期に名バイプレーヤーとして鳴らし、トレードマークの口ひげと「パンチョ」の愛称で親しまれた木下富雄さん(69)。2007年にオープンした焼き鳥専門店「カープ鳥きのした 十日市店」(広島市)は、新型コロナウイルスの感染拡大で大きな打撃を受けた。
「3月に入って徐々にお客さんが減り始め4月はかなり厳しい状態でした」。県の休業要請を受けて4月22日から店内での営業を停止し、約1カ月間はテークアウトのみの営業となった。売り上げは激減。それでも多くの人が店を案じ、応援してくれたという。
常連客はもちろん、木下さんの母校・駒大の同窓会広島県支部の人たち、店舗周辺のお寺のお坊さんらもテークアウト商品を買いに来てくれた。「人の縁や温かみを感じた。商品を買いに来てくれたお客さんにお礼を言うと、皆さん『頑張って』と返してくれる。その言葉がどれだけ励みになったことか」
店長を務める次男・宜之さん(38)と知恵を絞り、テークアウト向けのオリジナル商品も考案した。コウネの乗った「パンチョ丼」、牛タンの「大瀬良丼」、牛ロースの「菊池丼」、そして豚トロの「中崎丼(ザキ丼)」だ。「菊池丼」はツイッターで話題になり、「大瀬良丼」は大瀬良投手の妻でタレントの浅田真由さんがわざわざ買いに来てくれたという。店内での営業を再開した現在もテークアウト販売は続けており、4つの丼は人気商品になっている。