1980年代のカープ黄金期に貴重な中継ぎ左腕として、いぶし銀の活躍を見せた山本和男さん(65)。現在は広島市内で「焼肉・らーめん かずさん」を営んでいる。昼はラーメンや定食、夜は焼き肉を売りにし、中華料理などのメニューも豊富だ。94年にオープンして今年26年目。広島では知る人ぞ知る人気店だ。
カープOBというのに、店の中にはカープグッズは一つも置いていない。「プロ野球選手といっても、そんなに大した選手じゃありませんでしたから」と謙そんするが、一番の理由は「カープで商売しても長続きしない。やっぱりおいしいものを作ってお客さんに喜んでもらうのが一番。味で勝負したいと思っているんです」。
カープには81年から8年間在籍し、89年にオリックスに移籍。引退後は広島に戻って建築会社に勤務していたが、その時に昼食で通っていたラーメン店の味に魅了される。「特にホルモン炒めが最高においしくて、親父さんに『作り方を教えてください』ってお願いしたんです」。弟子入りが認められ、3カ月間修行した後、現在の店をオープンした。
お勧めはとんこつしょうゆのスープとレモンの酸味がマッチした「レモンラーメン」。「師匠から受け継いだ味です。今はいろんなお店であるみたいだけど、お客さんは『ここのレモンラーメンが一番おいしい』って言ってくれますね」。こだわりの焼き飯、師匠から譲り受けた秘伝のタレで炒めた焼き肉なども人気がある。
現役時代は貴重な中継ぎ左腕として活躍した。社会人時代にプロからの誘いを2度断っていたため、カープ入団は26歳の時。日本ハムに移籍した江夏豊がつけていた背番号26を背負い、1年目から30試合に登板。日本一に輝いた84年は46試合に登板し、5勝2敗、防御率2・93という好成績で貢献した。
スリークオーターからシュート、カーブ、シンカーなどの変化球を巧みに操り、左の強打者相手に“左キラー”ぶりを発揮した。「ヤクルトの若松さんは僕の顔を見るのも嫌だったみたいで、僕を見つけると『向こうにいけ!』ってよく言われました」と笑う。「一番怖かったのが阪神のバース。打席でギンギラギンのすごい目をして、こちらをにらんでくるんです。パワーもすごくて、市民球場で打ち取ったと思った当たりがホームランになった時はびっくりしました。球場が狭かったこともあるんですけど、向こうも“ホワイ?”って感じで両手を広げていました」。