工事現場で発見された野良猫の子猫たち。保護した作業員は、役場になかば強引に子猫たちを置いていった。本来、役場は動物の保護はしていない。しかし、見捨てることもできず、猫好きの有志が里親を探した。かねてから猫を欲しいと言っていたTさんのところに「子猫はいらないか」という話が舞い込んできた。
作業員が役場で置き去りにした子猫
高知県四万十町に近い工事現場、3匹の白猫の子猫が捨てられていた。母猫は見当たらなかったが、目はぱっちり開いていて元気だった。その周辺は野良猫がたくさんいる地域で、野良猫が出産して、母猫はどこかに行ってしまったようだった。工事現場の作業員が発見して、四万十町の役場の大正支所に連れて来たのだが、役場では動物の引き取りはしていない。他の要件でばたばたしていると、作業員は強引に猫を置いて立ち去った。
「子猫たちをどうしようか」という話になり、猫好きの職員で手分けして里親を探すことになった。支所の近所に住んでいて、猫を飼っている人に2匹預かってもらった。
残る1匹は職員が連れ帰り世話をして、里親を探した。
もう一度そのようなことがあっても、役場では対応できないそうだ。
猫と触れ合ううちに猫好きに
高知県に住むTさんが勤務している会社には猫好きの人が多い。
「お客さんや社長が猫を飼っていて、楽しそうだったので、私も猫を飼いたいと周囲に言っていたんです。役場に勤めている人と私が友達だったので、すぐに子猫の写真を送ってきてくれました。職員の人が連れ帰った子猫だったのですが、会うことにしました。生後2、3週間でした」
Tさんは、どこかで子猫が産まれたらもらおうと思っていた。会社の社長が猫を6匹飼っているので触るようになったが、それまでは引っ掻かれるのではないか、何をするのか分からないと思っていたという。
猫を飼うために何を揃えたらいいのかも分からず、会社の社長にキャリーなどを借りた。猫好きの社長は、子猫に会いに行く時、ついてきてくれた。子猫はまったく物怖じせず、Tさんの肩によじ登り甘えてきた。
名前はにらくんにした。
「当時、私の家がリフォーム中だったので、4カ月ほどの間、昼間は会社で一緒にいて、夜は社長の家で預かってもらったんです。職場では、ケージの中で寝ていたり、人の膝の上に乗ったりしていて、いつしか看板猫のようになりました」
役場の近所の人が預かっていた2匹の猫は、1匹は工務店の社長がもらい、もう1匹も無事里親が決まったという。
寂しくて、寂しくて
自宅のリフォームが終わり、にらくんはTさんの家で暮らすようになった。いままで大勢人がいるところにいたのに、家では日中1匹で留守番をしなければいけない。寂しかったのか、Tさんが家に帰ると背中に飛びついて来た。トイレを失敗することもあり、時には噛んできた。
「ストレスになっていると思いました。会社でも、それは何かのストレスアピールじゃないかと言われました」
にらくんは、お風呂掃除をしていてもついてくるし、お風呂に入っていても近くで寝ていた。寝る時も頭の上で一緒に寝て、家にいると四六時中後追いしてきた。
甘えてくれるのは嬉しいが、ストレスになってはいけない。Tさんが2匹目の猫しょうがくんを迎えると、にらくんのストレスも解消されたという。