地域猫の子猫「はかせくん」は、兄弟と一緒にいたところカラスに襲われた。緊急保護されたが、警戒心が非常に強くてまったく懐かない。保護団体のボランティアさんでも手を焼くほどだった。大人の保護猫を飼いたいと思っていた鳴海さんは、はかせくんのぶち模様に心ひかれた。
カラスに襲われていた子猫たち
埼玉県鴻巣市(こうのすし)の一角で地域猫たちが暮らしていた。2016年8月10日、カラスに襲われていた2匹の子猫をボランティアさんが緊急保護。保護団体アニマルエイドに持ち込んだ。3匹一緒にいたのだが、1匹はカラスに襲われ食べられてしまったという。
真っ白な毛にに黒ぶち模様の子猫は「はかせくん」、キジシロの子は「もっちちゃん」と名付けられた。
生後2カ月くらい。2匹とも怯えて固まっていたが、体調は良さそうだった。
野良猫の子猫なので警戒心が強く、譲渡会に出ても、なかなか里親さんが決まらなかった。譲渡会では人懐っこい猫を選ぶ人が多いのだ。ただ、はかせくんたちは、同じシェルターで暮らす猫とは仲が良く、寄り添って眠ることもあったという。
日中留守番のできる大人猫を希望
埼玉県に住む鳴海さんは、独身の頃からずっと猫を飼いたいと思っていた。しかし、当時はペット不可のアパートに住んでいたので飼えなかった。猫好きのご主人と結婚して戸建てに住むようになり、念願の猫を飼うことになった。飼うなら保護猫にしようと思っていたそうだ。
鳴海さんは独身時代、アニマルエイドの保護猫カフェに行ったことがある。人なれした20匹くらいの猫がいた。バックヤードにも保護されたばかりの猫が30匹くらいいて驚いたという。
「こんなにたくさんの猫!現実を見てショックを受けました。なんとか1匹でも2匹でも引き取りたいと思ったんです」
鳴海さんは共働きなので日中留守にすることが多い。飼うなら大人猫にすると決めていた。
「ホームセンターのペットショップも見に行きましたが、子猫しか売っていないんです。保護猫なら大人猫がいるし、引き取ることで社会の役に立てるなら嬉しいなと思ったんです」
懐かないツンツン猫のままでもいい
2018年2月、鳴海さんは、ご主人と一緒にアニマルエイドの猫カフェに行ってみた。1匹か2匹もらおうと思っていた。
「はち」と名付けたかったので、頭に「八」の字の模様がある子がいいと思っていた。はかせくんは理想の模様だったが、怯えてケージの中で右往左往し、威嚇すらしてこなかった。しかし、鳴海さんは、はかせんくんを迎えることにした。
もう一匹は、一癖ありそうなはかせくんとうまくやっていけそうな子を希望すると、マーロンくんというキジネコを勧められた。マーロンくんは、猫ともうまくやっていけるし、人懐っこい猫だった。
アニマルエイドのスタッフは、「はかせは問題児ですけど、本当にこの子でいいんですか」と尋ねた。それでも気持ちは変わらなかった。キャリーバッグに入れて帰ろうとした時、「一生人に懐かないかもしれません」と言われ、多少動揺したが、だからといって引き取るのをやめようとは思わなかったという。
「時間をかけてゆっくりなれてくれたらいいと思いました。成長を見守るのもひとつの楽しみです」
家庭内野良猫のようだったが少しずつなじむ
名前は、はかせくんをはちくん、マーロンくんをロンくんにした。
案の定、はちくんはなかなか懐いてくれなかった。人の気配がすると隠れてしまい、人が寝静まったのを確認してから、そっと出てきてキャットフードを食べていた。
鳴海家に来て3カ月。爪が伸びてきたので切ろうと思ったが、まったく捕まえられない。困った鳴海さんはアニマルエイドに電話して爪を切ってもらおうとしたが、「はかせくんは、絶対無理ですよ」と言われた。
いまは猫じゃらしに夢中になっているすきに、素早く1本だけ切っている。
1年近く家庭内野良猫のような生活が続いていたが、ロンくんの人懐っこさにつられるようにはちくんも少しずつなれてきた。いまでは、ブラッシングしてもらうと気持ちがいいようで、お腹を見せてごろんと横になることもあるという。