コインをお皿に置くと「にゃ~ん」と鳴きながら“猫ちゃん”が出てきてそのコインをかっさらってしまう、可愛い貯金箱をご存知でしょうか? 発売されて10年近く経つというのに、いまだ根強い人気の貯金箱で、TwitterやYouTubeなどにたびたび投稿されて話題を呼んでいます。
なかでも、リアルな猫ちゃんたちがお皿のボタンを押して遊んでいる動画の投稿が多く、お金を貯めるための貯金箱とはいえ、たくさんの猫ちゃんたちがはまっているといいます。単純な仕組みではありますが、猫ちゃんが貯金箱を何度も押して遊ぶ様子はどこか人間の赤ちゃんがお気に入りのおもちゃで遊んでいる姿にも似ているような・・・。ついつい押してしまうという魅惑の貯金箱、猫ちゃんにとって、どんな魅力があるのか探ってみました。
この貯金箱は、株式会社シャイン(本社・東京都中央区)が製造・販売している「NEWいたずらBANK」という、ワンコインずつお金を貯めていく自動式貯金箱です。実は、10年ほど前に旧バージョンの貯金箱が売られていたようですが、「NEW~」の方は少し塗装や音声などを変えて2016年にリニューアル発売されたもの。旧バージョンの発売直後から、猫ちゃんが貯金箱で遊ぶ様子はYouTubeなどでアップされているようです。シャインの担当者によると、シリーズ累計で既に約80万個売れている人気商品のひとつといいます。
冒頭に紹介した「みかんとじろうさんち」(@jirosan77)さんの投稿以外にも、ここ最近下記のような動画がアップされています。
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確かに発売以来、ほとんどの猫ちゃんたちがはまってしまう“魔性”(?)の貯金箱のようです。猫ちゃんたちが夢中になってしまう理由について、動物の脳神経などに詳しいという獣医師でYouTuberの「またりき」さんにお話をうかがいました。
――「いたずらBANK」の動画をご覧になって、猫ちゃんのリアクションについてどう思われますか?
「初めてこのような貯金箱があることを知りました。お皿を押したら開いて、猫がニャーンと鳴きながら出てくるという仕組みを猫ちゃんはちゃんと理解して楽しく遊んでいるのでしょうね」
――仕組みを理解して遊んでいるというのは?
「人間がお皿にコインを置くと鳴き声を発しながら猫が出てくるという様子を猫ちゃんが傍らで観察し、おそらく好奇心をそそられているのでは。自分も真似してやってみたいと思ったんでしょうね。そこで実際やってみると、中から猫が出てくる。単純な仕組みではありますが、面白いから繰り返して押してみるという。このように行動と結果を関連付けて学習させることで知能を高めるきっかけにもなりますよ」
――つまり、「いたずらBANK」で遊ぶことによって、猫ちゃんの知能を高められるということになるのでしょうか?
「知能を高められるというよりも、『押すと出てくる』ことを学習したということですね。さらに、訓練をして別のことを覚えてまた学習する。その積み重ねによって、知能を高められるということになるでしょう。うちの猫ちゃんも訓練してお座りとか、お手とかできるようになりました。得意げになると、最近はお座りしながらお手とかします」
――それはすごい。まるでワンちゃんですね。またりきさんの猫ちゃんが、特別にお利口さんなのでは?
「どんな猫ちゃんでも教えればできるかと思います。性格にもよりますが。ただ、ご褒美を与えたり、好奇心をそそるような仕組みを作ったりしないと、犬と違って単独で行動するマイペースな猫ちゃんはなかなかお座りやお手などはしません。例えば、お座りをするとエサをもらえると分かれば猫もお座りを覚えます。“猫ちゃん”の貯金箱についても、自分に似た声の持ち主である猫が出てくるという好奇心をそそる仕組みがあるから何度もお皿を押して遊んでいるのでしょうね。もしお皿を押してエサが出てくるような仕組みを作れば、さらに食いつきがよくなるのではと思います。お腹がいっぱいになるまで何度も押し続けるでしょう」
――猫ちゃんも学習すれば行動と結果を関連付ける知能を身に付けられる、つまり論理的思考力が身に付くということでしょうか?
「ある程度までは発達しますが、犬の方が頭はいいです。体重に対する脳の重さを示す、いわゆる脳化指数(EQ)という動物の知性を表す指標があるのですが、猫の1に対して、犬は1.2と少し賢いです。また、論理的な思考を司る大脳新皮質が、猫の場合、犬や人ほど発達していません。ですから、本来ならば論理的に考えることは不得意なはず。猫はどんなに成熟しても、人間の2歳から3歳くらいまでの論理的思考しかないといわれています。逆をいうと、それくらいの知能までは発達するということですから、単純な仕組みの『いたずらBANK』で楽しんで遊べるのはすごく納得します」
――猫ちゃんの知能は発達しても2、3歳の赤ちゃんくらいまでということ。でも、「いたずらBANK」もずっと遊んでいたら飽きてしまうかもしれませんね。
「本人が遊んで楽しい気持ちになるかならないかですから。お皿を押したくなる猫もいれば、押したいと思わない猫もいます。当然、飽きてしまうこともあるでしょうね。そこは人間と一緒です」
またりきさんのお話から「いたずらBANK」は、猫ちゃんの知能に見合った“知育玩具”のようなものでは? ただ、どんなに猫ちゃんが頑張っても知能の発達は人間の2歳から3歳くらいの赤ちゃんまでとのことですが・・・猫ちゃんが遊んで楽しい気持ちになる貯金箱であることは間違いないようです。
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最後に、10年ほど前に貯金箱にはまって遊んでいたというchikatamaさんが飼われているチョコちゃんの動画もご紹介します。
この懐かしい動画について、chikatamaさんは「この頃、チョコは相当はまって何カ月も毎日何度も何度も遊んでましたが、しばらく経つとすっかり飽きて今は見せても全く押してくれなくなりました。寂しいです」。
「いたずらBANK」はこれからも、猫ちゃんが一度ははまる定番“玩具”として愛用されそうです。
■「みかんとじろうさんち」Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCGfayXYTT_B3DnuGl5eGiKQ