新型コロナウイルスの感染拡大で、生活協同組合(生協)が脚光を浴びている。外出自粛や学校の休校などで、生鮮食品などを自宅へ配達する宅配の需要が急増。組合加入の希望者が殺到しているという。一方、生協の対応力を超え、欠配が出るなどの〝キャパオーバー〟に。生協職員に実情を聞いた。
関西のある生協に勤める職員は、緊急事態宣言の解除で「見通しが立たない状況が、少しでも変わってくれたら」と淡い期待を寄せる。宅配の新規申し込みは数カ月待ちの状態。注文の急増で、仕分けや配送の対応力を大きく超えてしまったことが理由だ。
日本人初のコロナ感染者が確認された1月下旬ごろから、宅配の申し込みや組合加入の問い合わせが急に増え始めた。一時の現象としてとらえていたが、感染者の増加と比例するように事態は切迫。対策を何も立てられないまま、2月にはパンク状態に陥った。
スーパーや薬局から姿を消し始めたトイレットペーパーやティッシュ、除菌剤などへの注文が殺到。メーカーの生産が追いつかず、カタログ掲載の商品数千種から欠品が徐々に出始めた。まとめ買いの嵐は長期保存ができるパスタや冷凍食品にも及び、購入が抽選に。現在では欠品や抽選制の商品をあらかじめリストアップし、ホームページなどに掲載。当落のお知らせをメールで送付しているという。
注文の急増に伴い、仕分けや配送も限界に達した。事務職員の応援を得て、仕分けを〝総力戦〟で対応している生協も。ドライバー1人あたりの届け先も数十件単位で増えた。ネットスーパーより安く便利な生協のニーズが高まるたびに、さらに対応できなくなるという皮肉な現象が起きている。
配達遅れや欠配が起こるたびに、電話での問い合わせや苦情も増えた。職員がコロナに感染した生協もあり「不安もあって、先が見えない状態だった」(前出の生協職員)と話す。外出自粛要請の解除で社会経済活動が正常化に向かう今、実店舗の利用客が増え宅配需要が少しでも落ち着くことを願っている。