今まで当たり前のように対面で行われていたことは、今や多くがオンラインに切り替えられている。本来ならば人同士が近距離で行われる「ピアノレッスン」もそのひとつ。通常のピアノレッスンは室内で行われ、顔を合わせて言葉を交わすことも多いため、感染リスクが生じる。そのため、レッスンをオンラインに切り替えて実施しているピアノ教室が多い。
いくつかある、レッスンのタイプ
京都府でピアノ教室を開いている崔理英先生も、3月上旬からレッスンをオンラインに切り替えた。
崔先生が行っているオンラインレッスンの形は、主に2つ。1つ目は、ビデオ通話をつなぎ、リアルタイムで演奏の指導を行うもの。通常のレッスンのように、生徒が演奏をし、それに対してリアルタイムで指導をする。先生がコメントをしたり、手本を見せたり、コミュニケーションを取りながら進めていく。
2つ目は、あらかじめ録画した動画を送り合うもの。生徒が演奏の動画を送り、崔先生はそれに対するコメントや解説を録画して、生徒に返す。生徒にとって「自分だけのアドバイス動画」になるため、練習のモチベーションアップにもつながる。「家はビデオ通話ができる環境なのか、動画を介して音楽のやりとりをすることに抵抗がないかなど、生徒に合わせて対応を決めます」(崔先生)
オンラインレッスンで使う機材は?
ピアノのレッスンとは、言わば音と音のやりとりだ。良質な音を拾うツールがあればレッスンの質も高まることから、専用の機材を用意しているという。使っている機材は、パソコン、小型の外付けカメラ、マイク。また自宅のWi-Fi環境も強化した。「内臓のマイクよりも、少し音がふっくらとしているんです」
遠方からのレッスン希望者も。「今だからできる」学びを
方法やスタイルを整え、機材も用意。そこまで準備してもなお、オンラインレッスンには難しさもあるという。
「音色の細やかな違いや響きなども指導しますが、それをオンライン上で表現することは難しいですね」
またリアルタイムのレッスンでは、先生と生徒のテンポ良いやりとりも欠かせないが、「ビデオ通話はタイムラグが生じることもあるので、慣れが必要。丁寧なやりとりを心がけています」
しかしオンライン独自の強みもあり、崔先生はデメリットをカバーしている。「近頃、遠方からのレッスン受講者が増えました。『音楽理論を教えてほしい』『曲の分析をしたい』といった、演奏以外の学びを希望する方も多いんです。今だからこそ、そういったことにじっくり取り組む時間にしても良いと思います」
また、タイムラグや音質的な問題は、言葉によるコミュニケーションでカバー。具体的に「どんな音で弾きたい?」「腕をこう使えば、〇〇な音を出すことができるよ」と積極的に言語化して質問や説明をしたり、カメラをアップで映したりして工夫している。
「生徒にとっても、的確に言葉にしたり、冷静に自分の演奏を見つめたりすることは、より良い学びにつながります」
どんどんスキルを高めたい、という意欲的な生徒にとって、オンラインレッスンは少し物足りないようにも見える。しかし崔先生は、「受け身ではなく、自発性のある方に向いている」と話す。「実際にこの期間に成長を感じる瞬間も多いです。時間がある時期を有意義に使うことで、半年や1年後にきっと成果が出てくると思いますよ」。とはいえ、緊急事態宣言も解除された。崔先生は「感染対策を行いつつ、徐々に通常のレッスンも行っていきたい」と語った。
■ピアニスト崔理英 オフィシャルサイト&ブログ https://sairie.com