新型コロナウイルスの影響で、小・中・高校生は3月上旬から「長い春休み」を過ごしている。勉強や遊びに力を注げない日々の中、京都芸術センターが「家で過ごす時間を、創作の源泉にできれば」という思いから、「おうちでアート」を立ち上げた。
このプロジェクトは、同センターにゆかりのあるアーティストが、インタビューに答える動画を配信するもの。美術、音楽、ダンス、演劇などの多彩な分野のプロフェッショナルが、「どうしてアーティストになったの?」「どんなことをしているの?」といった質問に答えている。2020年5月8日現在、19人のアーティストの動画が公開されている。
同センターのチーフプログラムディレクター、山本麻友美さんは、「アートのコンテンツを家でも楽しんでもらえれば、という思いから、京都市と相談して始めたものです」と話す。
このプロジェクトのターゲットは「子ども」。しかし、アートにまつわる事柄は、大人でも知らないことがたくさんある。芸術家はどんな生活をしているのか?どんな絵を描いているのか?現代美術とは?メディアアートとは?
山本さんは、「京都市の職員の皆さんも『芸術家がどんな活動をしているのか、案外知らない』とおっしゃっていたんです。だから、そういったアーティストに関する情報を発信するという意味も込めています」と語る。
また同センターはTwitterで、匿名の質問を受け付けるサービス「質問箱」を利用し、相談室も開設。アートに関するさまざまな質問を募集し、回答も行っている。
「美術家ってどうやったらなれるんですか?」という質問に対して、「京都芸術センターに来るアーティストは、やりたいことをやっていたら美術家になっていたという人が多い」「『美術家』に資格はない。今はやりたいことを見つけて、思い切ってやってみると面白いことができます」と回答。他の質問と共通して、ダイレクトに詳細な方法を提示することはせず、子どもが自ら考えを深めることを促している。
新型コロナウイルスによって多くの文化活動の自粛が求められ、芸術に携わる人々も苦境の日々が強いられている。同センターは、京都市が講じる支援策に関するサポートや、芸術に関するプロジェクトの考案など、アーティストが自立して活動できるような動きを進めている。
「この動画発信は、アーティストの皆さんにボランティアでご協力いただいているものです。しかしこれからはきちんと謝礼をお支払いし、動画などの新たなコンテンツづくりを行っていく予定です」
長く特別な春休みを過ごす子どもたちに向けて、山本さんはこう語った。
「ずっと家にいて、寂しい思いやストレスを抱えてしまう方も多いと思います。そんなたくさんある時間の中で多くのことを考え、いかに向き合うか。それは芸術作品を生み出す源になります。動画や相談室を活用して、創作への刺激にしてください」
■おうちでアート https://www.kac.or.jp/28151/
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