文庫本からキノコが?「本」の概念をくつがえす作品がズラリ…京都でブックアートの展覧会

平藤 清刀 平藤 清刀

 京都・三条にあるギャラリーで「THE LIBRARY 2020 in KYOTO」と銘打った、「本」をアートにした作品の展覧会が3月11日から15日まで開催されている。一般的にイメージされる本は、紙を束ねて一辺を綴じた形だろう。ところがTHE LIBRARYに出品される作品は、そういった一般的なスタイルの本ばかりではない。じつにユニークな形の本が並べられる。開催前日の3月10日、会場に作品を搬入しつつ会場の設営準備を手伝っていた作家さんたちから話を聞いた。

文庫本からキノコが生えている

 現代美術家の福本浩子さんの作品は、型を取って石膏で造形したように見えるが、文庫本に菌を植え付けた本物のキノコが生えている。

 「生えているのはヒラタケです。インクに含まれる毒性の成分を吸収しているから、これは食べられません(笑)」

 菌を植えて60日。土台の文庫本にも菌がまわって原形をとどめていないが、うっすらと印刷の文字が見えて、かつて本であった名残がある。余談ながら、福本さんは、堀博美というペンネームで「きのこライター」として執筆活動もおこなっている。

飛び出す絵本?

 イラストレーターとして活動するアカサカヒロコさんの作品は、ページを開くと薄い紙を蛇腹に織り込んだウエディングケーキのような造形が中央にある。

 「ページをめくっていくと、これを中心にストーリーが展開します」

 トレーシングペーパーと色紙を巧みに組み合わせて、色合いやグラデーションが工夫されていた。

140冊ならぬ「140個」制作

 スクリーンプリント工場で働く黒田麻紗子さんは、惑星や結晶など「円い形」にこだわって、1個につき1枚ずつ印刷した紙をブックマッチ(紙マッチ)のパッケージに織り込んだ作品を140個制作して展示。

 「自己満足でつくっただけなんです。どうぞ自由にお持ち帰りください」という。

 それで140個も!?

1994年から始まって東京と京都で年2回開催

 THE LIBRARYは、埼玉県で企画事務所「ART SPACE」を経営するS.Sさん(ご本人の事情でフルネームはNG)が企画・運営する公募展で、アンデパンダン(無審査で誰でも参加できるが褒賞がない)形式の展覧会で、1994年に始まって以来、毎年おこなわれてきた。

 「かつては福岡、広島、名古屋、仙台、札幌を巡回して展示会を開いていましたが、いまは8月に東京、3月に京都の年2回やっています」(S.Sさん)

 参加者はどれくらいいるのだろうか。

 「初回は54人から作品を集めて、最盛期は2003年の225人です。今回の京都は76人で、めずらしく100人を下回っています。北は北海道の帯広市、南は鹿児島県から作品が集まります。沖縄からの参加は、まだありませんね」。

 ちなみに出品できる作品は1人1点なので、参加者数と作品点数は同じである。また出品者の職業は、プロとは限らない。イラストレーターやライター、あるいは製本の職人さんなど本に関わる業界で活躍している人もいるが、大学の先生、お母さんと高校生の息子さんなど、いわゆるアーティストではない人の作品もある。

 「THE LIBRARY 2020 in KYOTO」は、2020年3月10日(火)~15日(日)の12時~19時「MEDIA SHOP gallery 2」(京都府京都市中京区河原町通三条下ル大黒町44 VOXビル2F)で開催中。ただし最終日は午後5時まで。

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