新型コロナウイルス感染拡大に伴う消費低迷や休業で、日本経済が「戦後最大の危機」(安倍首相)に直面し、政府も支援策を相次いで打ち出しています。ところが、いざ利用しようと思っても「制度が難しい」「何が使えるか分からない」という声が続出し、あまりの複雑さに申請を諦め廃業を選ぶ事業者も。そんな中、災害時の被災者支援に取り組む静岡県の弁護士が、現在の支援策が一覧できる「コロナ対策支援カード」を作り、話題を集めています。お話を聞きました。
静岡県弁護士会の永野海弁護士。東日本大震災の避難所での活動を機に被災者支援に取り組み始め、現在は日本弁護士連合会の災害復興支援委員会副委員長も務め、講演やメディア出演も精力的に行っています。
カードは受けられる支援を「生活費・家賃」「休業の支援」「その他」に分け、窓口や対象者、金額などが一目で分かる仕組み。イラスト付きで親しみ易く、今月6日にブログで公開、7日にはツイッターに投稿して以来、「わかりやすい」と拡散が続いています。
―なぜ、このカードを?
「私の元にも事業者や飲食店関係者らからの相談が相次いでいますが、政府の支援策のサイトは本当に字だらけ。私は日本で最も、そうした要綱を読んでいる1000人のうちの1人だと自負していますが(笑)、それでも無理。一度読んで分かった気になっても次に他の施策のページに切り替えたら前のは覚えていない。それぐらい難しいんです」
―専門家でも…なんですね。支援策が五月雨式に打ち出され、分かりづらいという声も。
「ええ。こうした事態で一番ダメージを受けるのは一般従業員や飲食店を始めとした零細事業者です。ですが、そうした人ほど知識も少ない。支援の全体像が見えれば、自分には何が必要で何が使えるかが判断しやすいはず…と、以前作った『被災者生活再建カード』の様式を使って作りました。字数の制限があるので、できるだけ簡潔に分かりやすくを心がけましたが、アクセス数は20万件を超え、被災者の時とは桁が違う。それだけ今は日本全国、皆が『被災者』ということでしょう」
―申請や相談窓口も長蛇の列といいます。
「今の支援策は申請主義で記入する事項も多いので、窓口で手取り足取り教えてもらい初めて申請できる-という人が大半でしょう。本来なら避けるべき“3密”をわざわざ作り出している。ですが、皆が被災者というこの状況で、社会福祉協議会や自治体等の窓口の職員に説明を任せるのは酷すぎます。今後、感染拡大で窓口も縮小となればどうなるのか。制度のあり方そのものが問われているのではないでしょうか」
永野弁護士は被災者支援にも長く関わってきましたが、「25年前の阪神・淡路大震災のときから国は個人補償には及び腰。二言目には『モラルハザード』という。あくまで困窮者対策であって、減収もないのにタダ乗りはダメ-というのは分からなくはないですが、そう言う間にも一般生活者は追い詰められていく。直接給付や補償で雰囲気が軽くなれば救われる人も多いのですが」と指摘。カードの内容は今後、新たな施策が発表されるごとに更新を続ける予定です。各地の弁護士会でも相談窓口を設けており、「お金が原因で命を落とすほど悲しいことはありません。一人で抱え込まず、外部に助けを求めてください」と訴えています。