コロナ感染・京産大生への中傷は名誉棄損罪に 愛知では「俺はコロナ」事件が続発

小川 泰平 小川 泰平

 ゼミやサークルの懇親会で新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した京都産業大に対し、学生の人格を否定する中傷や「殺す」「火を付ける」などの危害を示唆する電話やメールが数百件寄せられていることが判明したことを受け、元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は11日、当サイトの取材に対し、こうした行為は名誉棄損罪や脅迫罪に当たると指摘した。

 京産大では3月に欧州を旅行した学生を中心に懇親会などで感染が広がったとみられている。その報道を受け、苦情だけでなく、学生や大学を中傷する電話やメールが相次ぎ、「感染している学生の名前や住所を教えろ」「殺しに行く」「大学に火を付ける」といった脅迫的な内容もあったという。また、学生からは京産大生という理由で「飲食店への入店を断られた」「アルバイトを解雇された」など差別的な扱いを受けたことの相談が寄せられたという。

 小川氏は「学生の行動がほめられるものでなかったことはよく分かるが、SNSに個人名を書き込んで人格を否定し、誹謗中傷をし、犯人探しをしようという行為は名誉棄損に当たります。書き込まれている名前が実際には本人でないらしいという話もあるが、いずれにしても名誉を棄損したことに変わりはない。また、その投稿をリツイートして拡散した者も同罪になります。また、『殺す』や『火を付ける』に至っては脅迫罪です」と警鐘を鳴らした。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、感染者や医療従事者などが偏見の目や差別的な言動にさらされていることが報じられている一方、「コロナ」を騙った威力業務妨害などの行為も出てきている。

 小川氏は「3月に愛知県の蒲郡で陽性の50代男性が『俺はコロナだ』と言って飲食店をハシゴして問題化した後、死亡しました。その後も、名古屋市内だけでも同25日にドラッグストアで、29日には家電量販店で『俺コロナだよ』と叫んだ男が威力業務妨害容疑で逮捕され、4月7日には地下街で『俺コロナ』と叫んだ男が逃走した。マスクがない、消毒液がない、そんなストレスのたまる中で発散したとしても、その行動によって店は営業ができなくなる可能性もあり、民事で損害賠償請求されることになる」と、その代償が大きいことを説明した。

 「俺はコロナだ」と叫んで周囲を不安と恐怖に陥れる行動がある一方で、コロナに集団感染した学生を中傷し、殺害予告までする人もいる。愚行で逮捕された者も、匿名で中傷や脅迫をする者も、コロナショックのはけ口をぶつける行為という点で共通している。だが、それは何の解決にもならず、自分を貶め、相手を傷つけるという不毛な行為に他ならない。

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