突然ですが、ヘビってどうやって寝るかご存知です?まあそりゃ生物だから寝ないワケはないんですが、全く想像がつかない…。そんな、まさかの寝姿を紹介したツイートが「初めて見た!」「なんか愛らしい」と注目を浴びています。
ツイートの主は、ヘビ飼育歴約10年という、いるま(@irumandal)さん。今月14日に愛蛇(?)のムック君(ヨナグニシュウダ)がこれでもかという上目で「爆睡」している姿を写したツイートは、15日夜までに約1万リツイートと4.6万いいねを集めています。
ヨナグニシュウダは、アオダイショウやシマヘビと同じナミヘビ科のヘビで、沖縄県の与那国島の固有種。体長は1mから大きなものでは2mを超え、草原や茂み、森林などに生息しています。身の危険を感じると総排出孔から悪臭のする分泌液を出すため「臭蛇(しゅうだ)」という名前が付けられたそうですが、毒はありません。環境省のレッドリストでは絶滅危惧種(EN)に指定されている希少動物ですが、有志による繁殖も行われていて、いるまさんも3年ほど前にブリーダーから購入し、大切に育ててきたそうです。
―ヘビって、こんな顔で寝るんですね(笑)
「ヘビには瞼はありません。爆睡中なことがわかるのは、ご覧いただいたとおり瞳があらぬ方向を向いているからですが、他の種類のヘビでもよく見かけます。ヘビを飼育している人にとっては『あるある』ではないでしょうか」
―ムック君以外にも飼っておられるんですか?
「子どもの頃からヘビは好きでしたが、一人暮らしになってから飼育を始めました。今飼っているのは、ヘビが18匹、ヤモリが6匹、カメが1匹います。あとは熱帯魚と、妻がファンシーラット6匹を飼っています。ヘビ以外でも細長い生き物にはどこか惹かれるものがあって、最初に飼った1匹(コーンスネークという種類です)もまだ元気です」
―ヘビの魅力ってどんなところなんでしょう?
「たくさんありますが、第一にはその姿形の面白さだと思います。哺乳類のような懐き方をするわけではないので、基本的には環境を整えて形や行動を見て楽しむ生き物です。一括りに『ヘビ』と言っても色も形も様々なので、コレクションに近い楽しみもあるかと。もちろん、1匹だけを長年家族のように可愛がっている方もいらっしゃいます。私はどちらかというと集めてしまう方ですが、今回のようにユーモラスな姿を見ると微笑ましいですし、小さかった個体が成長すると感慨深いです。ちなみに、それぞれの個体に名前をつけていますが、ムックは9月6日生まれをもじって名付けました」
―名前があると一気に親しみが沸きますが、個性とかあるんですね。
「ヘビにも種ごとの大まかな性格と個体の性格があります。ヨナグニシュウダは一般的に神経質で荒いと言われていますが、ムックは基本的に穏やかで、飼っていて噛まれたことはないですね。これは扱う側も驚かせないようにとか気を遣っているからでもありますが。繁殖させた個体は野生から捕まえた個体よりも穏やかなことが多いと考えられています。生まれた時から人間に飼育されているので、そういうものなんでしょうね」
と答えてくれました。18匹もいたらケンカしないのかな、と心配しましたが、そこは「基本的に1匹ずつ飼うので、それぞれ別の水槽やケージに入っている」ので心配ないのだとか。となると、部屋は水槽だらけになりそうですが、「生き物のための生活ですね(笑)」といるまさん。奥さまとの距離を縮めたのも「生き物好き」がポイントだったそうです。
今回、ヘビ好きでない人からも多くの反響を受けたことについて、いるまさんは「世間一般では『怖い』とか『気持ち悪い』と思われることが多い生き物ですが、よくよく見ると美しかったり、可愛らしかったり、ユーモラスだったり、魅力いっぱいです」と力説。「どうしても苦手な方は仕方がないですが、今回広く見ていただいたことで、先入観に囚われずにヘビ本来の姿を見つめてくれる人が増えれば嬉しいと思っています」と話していました。
【追記:2020/03/16】
環境省などのレッドリストは普及啓発を目的にしたもので法的強制力はなく、同省や沖縄県によると、ヨナグニシュウダは種の保存法や県条例等の対象外で、現在でも捕獲自体は規制されていません。人工繁殖も行われ、CB(Captive Bred:飼育下で交配・繁殖された個体。何代にもわたり繁殖させた種もある)がペットとして販売されています。一方で悪質な業者もおり、沖縄県は「近年捕獲数が増加しており、危険性が高まっている」と指摘。愛好家らは自然保護と趣味の両立に向け「購入の際には成育歴などを確認して」と呼びかけています。