失われた別れの体験 儀式ロスが子供の心に与える影響…スクールカウンセラーが解説

中村 大輔 中村 大輔
みんなと同じ時期に卒業ができなかった男性がその後、家に引きこもった例もある(yamasan/stock.adobe.com)
みんなと同じ時期に卒業ができなかった男性がその後、家に引きこもった例もある(yamasan/stock.adobe.com)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大防止のため、学校の休校が相次ぎ、子供たちは外出も控えるようになりました。街では商品の品切れや行列が起こり、咳払いをするだけで気を遣うようになりました。先の見えない不安を感じながら、社会全体で我慢する時間が増え、目には見えないココロのウイルスも私たちを脅かし始めているのかもしれません。

こうした状況下では、感情的にイライラしやすく、ちょっとしたきっかけで傷つき、不安から抜け出せずに新年度に持ち越してしまうことも懸念されます。一人一人の意識的な心がけと具体的な見通しを持つことが今後は大切になってくるでしょう。

また、非常時は目の前に差し迫った危機に目が行きがちですが、事態が収束してくると失われた“ロス”の体験に対して、様々な心理的な反応が起こります。

ある中学生の女の子は「卒業式に告白しようと思っていたのにできなくなった」と涙しました。また、小学校6年生の男の子は、残りの学校生活を一日一日名残惜しみながら過ごしていましたが「急に全て無くなってしまった」と残念な様子で語りました。

友達との別れ、ペットロス、失恋など、人は自分にとって大切な何かを失ったとき、情緒的な様々な反応を起こします。こうした心理的反応を“悲哀(モーニング)”と呼び、喪失を受容していく作業のことを“モーニングワーク”と呼びます。

悲しみの中で少しずつ現実を受け入れながら、心の支えとなるものを模索し、喪失体験を受容していきますが、それを受け入れられずに怒りや否認の感情が湧くこともあります。

モーニングワークが上手くできないと、対象への執着からストーカー行為へと発展したり、悲しみの感情から抜け出せずに抑うつ状態に陥ったり、自己の内的な世界に安心感を構築できず、いつまでも心が過去に留まり続けてしまうこともあります。

ある40代の男性は中学生の頃に入院をして、みんなと同じ時期に卒業ができず、その後は不登校、就職できずに家で引きこもる生活となりました。

「みんなと一緒の時間を共有したかった」「見た目は大人になってしまったけど、今でも中身は中学生のまま」と語りました。

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