心の支えや、達成したかった機会を奪われてしまうことは、事故や災害等でも起こります。喪失体験を回復できずにいると、そのまま心の傷として残ってしまうこともあります。
どうすれば、こうした喪失体験を克服し、心の平穏を取り戻すことができるでしょうか。
心を整理していく有効な手立てには“語り”があります。“語り”は古くから人類が行ってきた癒しの伝統的文化といえます。
青年期における卒業式や成人式は、同じ時間を共有し、語り合い、今までの自分との別れと、新しい自分を作り出すための再生の象徴的な儀式ともいえます。別れを受容する語りには、数日以上かかることも珍しくはりません。
こうした語りの場を失うことで、心理的な成長を経ないまま年齢だけ大人になり、未熟なままに社会へと出てしまうことも考えられます。
非常事態では、皆が協力し合う姿勢を持つことは大切ですが、子供たちの心はまだ発達途上にあります。寂しくても言い出せないこともあります。置き去りにされた心にも目を向け、家族で学校生活を振り返ったり、アルバムを見返したりしながら語りの場を作り、落ち着いてから同窓会や仲間との語らいの場を作ることをしてみてはいかがでしょうか。