新型コロナウイルスに感染した愛知県蒲郡市の50代男性が周囲に「今からコロナウイルスをばらまく」などと予告後、同市内で複数の飲食店を訪れて「自分は陽性だ」などと話していたことが判明した。元神奈川県警刑事で犯罪ジャーナリストの小川泰平氏は6日、当サイトの取材に対し、「本人が新型コロナウイルスの陽性と認識していることから傷害罪になります」と、刑事事件になることを指摘。さらに、店舗への威力業務妨害に加えて、店や他の来店客に対する損害賠償が発生することを付け加えた。
同市の会見などによると、男性は先に感染が判明した両親と同居。目立った症状はなかったが、4日に検査で陽性と判定されて、愛知県から自宅待機を要請されていた。
男性は陽性判定が出た後、家族らに「今から駅前でコロナウイルスをばらまく」と話し、訪れた店で「自分は陽性だ」と話したことから通報され、警察官が店に駆け付けたという。保健所は既に店を消毒し、この男性は県内の医療機関に収容されている。蒲郡市の鈴木寿明市長は、自宅待機の要請が守られなかったことを受け、「市民に感染の危機があったことは遺憾」などと述べた。
周囲に感染の可能性があることを認識しながら、人混みのある街に出て、しかも接触のあるおそれもある飲食店に立ち寄ったことは刑法上、どのような罪になるのだろうか。
小川氏は「過去に、性病にかかっていることを自分は承知の上で性行為に及び、相手に感染させた者に傷害罪が適用されたケースがありました。今回も、本人が認識した上で感染の可能性がある場所に感染させる目的であえて行ったということですから、傷害罪になります」と解説した。
傷害罪だけにはとどまらない。小川氏は「店に対する威力業務妨害になりますし、さらには消毒などのために一時閉店させたことへの損害賠償も出てくるでしょう。損害賠償は店だけではない。同じ時間帯に飲食店にいた人たちは今後、検査を受けなければならなくなり、そのために仕事を休むなどさまざまな影響が及ぶことから、全員に対して損害賠償が発生します」と指摘。また、同氏は「警察的には病状が回復し、再度の検査結果が陰性となった以降に事情聴取、取り調べが行われると思われます」と説明した。
小川氏は「この飲食店以外にも食事などで立ち寄った場所があるはず。いずれも許容範囲を超えた行為です」と、自覚のない行動に危機感を示した。