大阪市の中央区道修町(どしょうまち)。製薬会社が本社を連ねる一角に、小さな神社があります。日本と中国の医業や薬業の神様を祭っている「少彦名(すくなひこな)神社」です。新型コロナウイルス(COVID19)が猛威を振るう中、製薬会社の「聖地」とも言えるこの神社を参拝し、「健康守(まもり)」というお守りを手に入れる人が増えているといいます。感染拡大に歯止めをかけてほしいという人々の切実な願いが現れているといえそうです。
道修町は東西に長い町です。その東側、京阪電気鉄道の北浜駅の近くに少彦名神社はあります。少彦名神社は、日本書紀にも登場する日本の医薬の神、少彦名命(すくなひこなのみこと)と、中国神話で本草医学の神とされる、神農(しんのう)を祭っています。江戸時代後期の1780(安永9)年、道修町一帯に店を構えていた薬種商たちが、これらの神様を祭ったのが始まりです。
1822(文政5)年に大坂で伝染病のコレラが流行した時には、薬種商たちが神前で祈願した薬と、張り子の虎を市民に授与しました。これが「コレラに効く」と評判になりました。以降、張り子の虎は神社を象徴する存在となり、病気平癒・健康成就に御利益がある神社と知られるようになりました。
神社によると、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、2月上旬から参拝者が増えたといいます。神社には最近、「新型コロナウイルスが終息しますように」や「COVID19の治療薬が一刻も早く開発されますように」といった願い事を書いた絵馬が多く奉納されているそうです。
そうした中で参拝者の注目を集めているのが健康守です。オレンジ色と白色の斜め市松模様のデザインで、神社のシンボルの張り子の虎が描かれています。約20年前に授与を始めたと言います。新型コロナウイルスの感染拡大で授与希望者が増え、2月下旬以降はより多くの人に行き渡らせるために授与は1人につき3体(個)までに限定しているほどです。
「製薬会社の社員は日夜、新型コロナウイルス対策のためにがんばっているようです」と別所賢一宮司(47)。少彦名神社では、朝夕に神前で祝詞を上げる際も、新型コロナウイルスの感染が終息するようにと祈願していると言います。別所宮司は「道修町一丸となってウイルス対策に取り組みます」と意気込みを語っていました。